私の中の見えない炎

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満田かずほ監督 × 江村奈美 トークショー レポート・『マイティジャック』『戦え!マイティジャック』(2)

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【『戦え!マイティジャック』の現場】

 『戦え!マイティジャック』(1968)に入って、南廣氏は続投し、江原奈美氏ら新隊員も投入された。

 

江原「いま思うと、だいぶご迷惑をかけた。ビデオを見ると汗が出ます」

満田「アンヌ(ひし見ゆり子氏)は『ウルトラセブン』(1967)で20歳。大人の女性という感じ。江原は大きな子役というか。あまり難しい芝居はなかった。いるだけで十分だと。『戦え!』では難しい話はなかったし」

江原「松竹の舞台の娘役などで出ていました。コント55号ドリフターズの公開録画にも出ています。これは舞台そのままでした」

 

 江原氏は江原奈美隊員役。役名に併せて芸名を変えている。

 

江原「所属していたプロダクションからオーディションをと。前の芸名から変えるのは、私には事後通告でしたね。テレビの撮影現場は『戦え!』が初めてでしたね。素のままでいられたというか(演技に)あまり悩んだ覚えはないです。

 私自身は女子校で来て、男性4人を前にどう接していいか判らない。どう話していいか。大人の男性がごそごそ話していて、気がついたらお茶くみになってましたね(笑)」

 

 江原隊員は爆弾の専門家という設定。オープニングは実験室にいる江原氏の前で爆発する。

 

江原「オープニングの撮影から始まって、怒られました。どれだけNG出したか。怖いんで私がフレームから飛び出しちゃって。バーンっていったとき、目つぶっちゃって。爆弾の専門家が目つぶっちゃったらダメですよね。ピストルと爆弾は怖かった。(カエルを持ってるが)それ覚えてないくらい爆発が怖くて。これからこういうのが続いたらどうしようって」

満田「(迷惑をかけたとは)思ってません。そんな怖いシーンはひとつもない」

江原「皇居の格闘シーンとか、あれは満田さんじゃないかな」

満田「おれは怖い思いはさせてない(一同笑)」

江原「屋根を飛び越えるとか死にそうでしたね。飛び降りたとき、カメラの前でポーズとるとか。怖い思いをしたのは屋根と爆発とピストル。熱くて何度も手袋を変えましたね。川辺で転がって、でこぼこしてたから、転がっていって戻ってきちゃって(一同笑)」

満田「弾着は(映像では)音付けてるからオーバーに感じるけどパン!くらい」

江村「そんな! 怖いですよ」

満田「TBSのドラマで、戦場のシーンでエキストラやったことがありますね」

 

 『マイティ』2部作の特撮シーンは素晴らしい。

 

満田「メカの発進シーンはあらかじめ溜め撮りしてある。よくできてると思いましたよ。カメラも高速回転するのを導入してるし。(ミニチュアも)大きくつくってるなって。ただ特撮のスタジオは狭くてかわいそうだったよね。越谷のスタジオだった。メカは特撮班がやってくれて、こっちは操縦してる人間を撮る」

江村「発進するときの(コックピットの)シーンは美センへ行きました。狭くて暑かったですね。ライトもあったし。私がすわる座席のつくり込みはすごかった。

 (巨大なものを前にしたシーンでは)ブルーバックの前で演じるので、全く実感なかったですね。巨大なものがいると想定して」

満田「飛ぶ方向にも気をつける。裏焼きできるようにするとか機体のナンバーをローマ数字にしとくといいんだよね」

 

 上映された第17話「逃げたぞ それ行け つかまえろ」では、脱走したロボット(声:高橋和枝)が市街地にいるシーンが印象的。

 

満田「(街のシーンは)日活の銀座オープン。1時間いくらって払ってると思うけど、ほかの車は入ってこないし、通行人もエキストラ。自由にできますね。使い回しのエキストラもいて、通過したら衣装を変えて出てくる」

江村「寒かったり、ロケが多かったり。初めての経験でしたね。自分が画面の中でどの大きさで撮られているとかも判らなかった」

 

 17話の江原氏が口紅をつけるシーンは、さりげなく笑わせる。

 

江村「(口紅は)あれも無茶ですよね。お嫁に行けなくなる(一同笑)」

満田「コミックな作品だったからね。部分部分、細かいところも注文して、寄り目にしてもらったり。奈美はうまかったね。前に何もなくてもできる」

江村「なくてもできるんです」

満田「意外と俳優さんは乗るんだよ、コミックなものは。

 自分が少年のころ見てたのはアボットコステロかな。チャップリンの映画はほとんど見てるけど別に好きでも。エノケンとかも」

 

 その他にさまざまな労苦があった。

 

江村「(シャワーのシーンでは)髪が濡れるのには頓着しなかったですね。水に近いお湯で、それでものぼせましたね。あれはきつかったです。

 中島温泉のロケで40度以上の熱を出しても休まなかったら、お医者さんに怒られましたね。「心臓止まるぞ」って。それでも2、3日でよくなりました。(キャリアの)出だしが舞台でしたから体調とかに厳しくて、休めない。ひとり休むとスケジュールが変わってしまうので。楽屋で序列が下の人から挨拶とか。ポワーッとした女子校の女学生だったのが訓練されたなって。

 満田監督はいつも穏やかでしたね。注文はあったかもしれないけど、私が覚えてない。能天気でした(笑)」(つづく