私の中の見えない炎

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稲垣高広 × 川口貴弘 × 世田谷ピンポンズ トークショー レポート・『まんが道』(2)

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【『まんが道』とは (2)】

稲垣「ぼくが読み始めたのは、小学校高学年。(主人公・満賀道雄が)まだ高岡に暮らしているあたり、そのへんが印象深くて。進路に迷ったり、自分と重なって感情移入。

 満賀道雄は新聞社に入って、ラジオ欄を担当して失敗する。テレビがなかったからラジオがマスメディアの最たるもので、そのラジオ欄を間違えて載せて大騒ぎ。クレームがたくさん来る。あれを見て社会は怖いな、と(笑)。社会の厳しさを知りました」

川口「何度か大きな失敗をしていますね」

稲垣「でもそれで引きこもったり自殺したりせずに、乗り越えて。ビルドゥングスロマンの効用として、主人公がどう失敗を乗り越えたかというのがある」

 

 『まんが道』(小学館)には印象的な場面が多々あるが、満賀道雄才野茂ふたりが郷里を離れ夜汽車で上京するシーンは特に記憶に残る。

 

川口「ぼくの田舎は千葉の船橋市。『まんが道』の上京シーンがうらやましくて、親に“田舎へ行って上京したい”って(一同笑)。それくらい上京にあこがれて」

ピンポンズ「ぼくは栃木で、上京するのに1時間(一同笑)」

稲垣「ぼくものぞみなら、(愛知から)1時間くらい(一同笑)。『まんが道』では10時間くらいかけて、いまはなき夜行列車で上京する」

川口「いまは夜行バスでも5、6時間ですね」

 

 上京した主人公は、両国の下宿に住んでからトキワ荘に引っ越す。

 

ピンポンズ「個人的に好きなシーンは、初めてトキワ荘に入って自炊をするシーン。満賀はごはん炊いて、才野がキャベツ切って、つくり終わったら味噌と鍋がない。なぜかふたりが大爆笑(一同笑)。あの笑いのテンションはすごい。そこへ隣の部屋の女性が来て、鍋を貸してくれる。するとスーッと静かになる」

稲垣「(その女性は)ほんとのトキワ荘でも住んでいらっしゃったそうです。F(藤子・F・不二雄)先生のほうが淡い気持ちを抱いていて、自炊は順番なのに、いつも“おれがやるよ”って(笑)。でも藤本先生がホテルでひとり缶詰になってる間に引っ越してしまったと」

川口「ぼくは手塚(治虫)先生とトキワ荘が大好きで、大人になってからその話をこんなにできるなんて」

稲垣「中高時代は孤独でしたよ。いまは『ドラえもん』を大人も読むって感じになってるけど、昔はコケにされました」

 

【『まんが道』のモデル・舞台】

 稲垣氏の解説で、『まんが道』の登場人物のモデルや、舞台となった土地が語られた。高校時代に主人公を激励する美しい同級生が、霧野涼子(涼子さん)。作中では妻子持ちの男性と不倫して自殺してしまうが、モデルとなった桜木氏はご健在。

 

稲垣「この方は地元で有名だったみたいで、この人の登校になると見物人が出るくらい。(満賀といっしょに遅れて登校する場面が印象的だが)実際に遅刻の常習犯だったそうです(一同笑)。

 A(藤子不二雄A)先生の初期の作品を読んでいると、美人の桜木さんっていうキャラが出てくる」

 

 桜木氏は、稲垣氏とともに『まんが道をゆけ!』に出演された(当時見ていた筆者は、涼子さん登場に驚いて爆笑)。

 

稲垣「A先生は、教室のいちばん前の席で、手を上げてもいないのに先生に当てられて、からかわれていたそうです。

 連載当時は読んでいなかったので、殺されたことは知らなかったと(一同笑)。

 新聞社に入ってからは竹葉さんという同僚がいて、(主人公は)この人と結婚して子どもがいるという妄想をしている。

 (主人公たちが通う)文苑堂書店には、タコに似たおじさんがいる。いまの(文苑堂の)方にお聞きすると、その方は常務だそうです。あんな顔はしてない(一同笑)」

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 才野茂富山県内の会社に一旦就職するが、すぐに退職。その就職先の会社があった場所(いまは空き地)の写真も紹介された。

 

稲垣「F先生は地元のお菓子メーカーに就職されて、指を怪我される。それで1週間で辞めた。『まんが道』で才野は1日で辞めています。いちばん大したことない(空き地の)写真が、マニアにはすごく見える(一同笑)。こういう場所は地元の人でないと判らない」

川口「もう考古学の世界ですね」

 

 藤子不二雄のおふたりの母校は、富山県高岡市立定塚小学校。

 

稲垣「定塚小学校の一室は藤子不二雄ルームみたいになっています」

 

 上京してトキワ荘に入った主人公がよく行ったラーメン屋さんが“松葉”。このお店はいまも営業中。よく行った公園が中野区の哲学堂公園

 

川口「松葉は、鈴木伸一先生曰く、味が変わった。ここはトイレがなくて、奥の住宅の部分にあって入れてもらいました」

稲垣哲学堂公園では、トキワ荘のメンバーが野球やテニスをやる。歩いて行ったら、結構(距離が)ありました」(つづく)