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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

野沢尚の仕事部屋・『書斎曼荼羅 本と闘う人々』

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 「IN POCKET」2000年10月号にて、作家の仕事場拝見のコーナー(「書斎曼荼羅 本と闘う人々」)に脚本家・作家の野沢尚氏が登場している(後に書籍化)。

書斎曼荼羅 2 ―― 本と闘う人々

書斎曼荼羅 2 ―― 本と闘う人々

 

 野沢氏はインタビューなどに登場する際は、例えば喫茶店などへ出向くことは少なかったようで、概ねいつも仕事場のマンションで受けている(それゆえ、野沢氏のインタビュー記事をよく読んでいると、頻繁に見る場所である)。

 この連載の文・絵を手がける磯田和一氏(2014年逝去)にとって、さまざまな著名作家の仕事場を毎回訪ねるのは「緊張と気疲れの連続」だったという。

 

しかしながら、今回の野沢氏は違った。名刺を交換し合う時に「書斎曼荼羅はいつも楽しく拝見しています。いやあ、感激です。いつか私のところへも来て頂ければ嬉しいなあ、なんて思っていたものですから」と、それもはにかむような笑顔でおっしゃったのである。この一言に気の弱い僕は勇気づけられ、緊張感さえ消えるほどリラックスできた。

 野沢氏の取材者への気遣いと思いやりなのである。脚本家として、映画やテレビドラマの撮影現場を覗きにいかれるときにも、スタッフ全員分の差し入れを持参されると、なにかの雑誌のインタビューで、話されていたのを記憶しているが、これだけ映画界やマスコミ、さらには文壇の寵児として活躍されていながら、僕らへの気配りは、こちらが恐縮するほど細やかで、実に楽しく過ごさせて頂けた。話し方も少年のように飾らない人で、特にサッカーの話をされるときには仕事の話をされるときよりも雄弁で、サッカーの話題から話を変えねばならない瞬間の、もっともっと話したいのに、と言いたげな、なんとも悲しそうなお顔が、失礼ながら実に可愛くて可笑しかった」(「IN POCKET」2000年10月号)

 

 執筆用の仕事机や応接間だけでなく、別室があるそうで、そこでは新聞や雑誌の切り抜きだけをするのだとか。自分の作品が取り上げられた記事や書評も含めていろいろとスクラップして、「乱歩の貼雑年譜のようにしたくて、べたべたこまめにつづけています」という。マニアとしては、見てみたい…。

 

 この年の12月に、野沢氏は『深紅』(講談社文庫)を発表。『深紅』は代表作のひとつとして評価が高く、翌2001年に第22回吉川英治文学新人賞を受賞した。また記事中でも触れている趣味のサッカーを題材にした『龍時』シリーズ(文春文庫)を、2002年から刊行している。

 2004年6月、この仕事場にて野沢氏は亡くなるのだった。

 

【関連記事】野沢尚 インタビュー “僕が脚本家と小説家を往きつ戻りつする理由”(1999)(1) 

深紅 (講談社文庫)

深紅 (講談社文庫)

 
龍時(リュウジ)01─02

龍時(リュウジ)01─02

 

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