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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

三谷幸喜 インタビュー(1999)・『温水夫妻』『マトリョーシカ』(1)

三谷幸喜 舞台

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 以下に引用するのは、「WEEKLYぴあ」1999年2月8日号に掲載された、三谷幸喜インタビューである。映画『ラヂオの時間』(1997)の脚本・監督、テレビ『今夜、宇宙の片隅で』(1998)のシナリオなどを手がけていた三谷氏が、2年ぶりに発表した舞台が『温水夫妻』(1999)と『マトリョーシカ』(1999)。前者は太宰治唐沢寿明)が主役で、戸田恵子角野卓造梶原善などが出演(角野氏は本作により第7回読売演劇大賞を受賞)。後者は松本幸四郎市川染五郎松本紀保という幸四郎親子が出演するサスペンスタッチの物語。引用者は、劇場でなくテレビで見たのだが、2本とも出色の出来栄えだった。

 インタビューでは、舞台の内容はもちろんだけれども、身辺のこともかなり話している。翌2000年から「朝日新聞」に連載されるエッセイ『三谷幸喜のありふれた生活』(朝日新聞出版)の先がけのような印象で、どうでもいいと言えばどうでもいいのだが、読んでいてなんとなく面白いのでノーカットで引用する(用字用語はできる範囲で統一し、明らかな誤字は訂正した)。

 

――2年ぶりの新作ですね。しかも、2作連続上演。脚本の進み具合はいかがですか?

三谷 4月の『マトリョーシカ』の脚本は書き上げました

――えっ、もう?

三谷 順番が逆になっちゃったんですが、3月の『温水夫妻』も、たぶん1月中には書き上がると思いますよ。4月からまた始まるTVドラマ『古畑任三郎』も同時進行で書いてます

――そんなに順調なんですか。三谷さん=遅筆の人というイメージがあるもんですから、てっきり…。

三谷 そうなんですよね。でも『巌流島』で初日を遅らせることになったときに、次に同じようなことをしたら筆を折るって宣言してますから。心を入れ替えたんです

――でも、逆にそれがプレッシャーになるなんてことは?

三谷 まあ、遅らせずに自分も満足するものを書くっていうのは、とりあえず毎回プレッシャーではあります。でも、ちゃんとやってますよ。生まれ変わりましたから。ただ、実際もっと筆が遅い方もいるはずなのに、僕はこれからも大きな十字架を背負って生きていかなきゃいけないのかなぁというのはありますね

――1日も早く汚名を返上したい!といった心境?

三谷 ええ。追い詰められているとか、そういうイメージもぬぐい去りたいですね

――ドロドロの執筆地獄を語っていただけると信じてうかがったのに失敗です(笑)。心の叫びを5つくらい書いてもらおうと用意してきたボードもムダになっちゃいました。

三谷 じゃあ、そうだな、ボードにはライバルを5人あげてみましょうか。考えておきます

――それは助かります(笑)。

三谷 そもそも僕は、遅筆と言われること自体にも、納得していないんですよ

――というと?

三谷 本当に筆が遅いかどうかは、何人かで同時に同じテーマで書かせないとわからないと思うんです。たぶん、僕が書いているものは、ほかの人が書いたらもっと遅いだろうし、逆に、ほかの人が書いているものを僕が書いたら、もっと早く書けるかもしれないし。単に時間だけみて遅筆と言われても納得がいかないんです 

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――なるほど。それにしても、今回の執筆は順調ですね。

三谷 どういうものをやりたいかがハッキリしていたのと、登場人物が少ないというのが大きいですね。あと、今回は自分で演出もやりますから

――自分で演出をするほうが、脚本が早い?

三谷 精神的に楽なんです。演出家が別にいるときは、脚本を手渡す段階で完璧なものにしなきゃいけないわけですけど、今回は稽古場で作れますから。実際、俳優さんにセリフをしゃべってもらってふくらませていくほうが、絶対に面白いものができると思うし

――なるほど。

三谷 それに、こっちもずっとひとりで書いていると、言葉が浮かんでこなくなるんですよ、漢字が書けなくなったり、人と話すときにうまく言葉が出てこなかったり

――一種の失語症状態。確かに言葉って、人と会話しないと出てこなくなりますよね。

三谷 そうなんです。それが、映画を撮ったときに久々に大勢で何かを作る場を経験したら、頭が冴えわたって。暗算が得意になったんですよ

――暗算が!?

三谷 あと、電話番号を覚えるのも得意になった(笑)

――ハハハ。

三谷 でも最近、また衰えてきてるんで、そのリハビリの意味も含めて、久々に稽古場に行けるのを楽しみにしているんです。近頃、笑わせようと思って自分が書いたものは、やっぱり自分で演出するのがベストではないかなと腹をくくったところもありますし

――ところで、三谷さんは朝型だそうですね。

三谷 ええ、毎朝5時半くらいには起きます。で、コンビニで新聞とその日に出た雑誌を買って、家でひと通り読んでから仕事をして。あとは近所に散歩に出掛けたり、ちょっと遠出したい気分のときは新宿まで出てみたり…

――規則正しい生活。

三谷 というよりは、ほかにすることがないですから(笑)。でも、必ず見る番組とかは決まってますね

――たとえば?

三谷 朝は『めざましテレビ』を見て、それが終わったら8時から8時半までテレビ朝日の『スーパーモーニング』。この番組、2部構成になっていて、この時間にはわずらわしいコメンテイターがいなくていいんですよ。優れた編成だと思うんですけどね。あとは郁恵ちゃんと井森の『お料理BAN!BAN!』とか、グッチ裕三さんがやっている料理番組とか、中井美穂さんのお料理コーナーとか…(つづく)

 

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