私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

山田太一 × 中井貴一 × 堀川とんこう × 内山聖子 トークショー レポート・『時は立ちどまらない』(2)

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【企画とテーマ(2)】

山田「被害に遭わなかった家、中井さんの(役の)思いは私の思いでもあったんですね。何かをさせてくださいってあの気持ち、ぼくにもよく判るし、何かしないと気が収まらない。体育館とかが遠くなければ何か持っていったと思うけど。でもこれは義理で、人情があるわけではない。すると、そんなそれで気が済むとかで、つき合ってられない。そういういい人って断ち切らないといけない。じゃあ一泊させてくれって言って暴れたら、お前らの善意なんてこれくらいで驚いちゃうだろ。そういうシーンがあれば、両方のバランスが取れるかなって」

中井「ホンを見て、おれこれ(台詞)言わなきゃいけないのかってのも…。でも東北の(被災者の)中で格差があるなんて考えてもみなかったんで、これは大事だって自分に言い聞かせて、役に入っていかないと、できなかったですね」

内山「(当初)“時は立ちどまらない”という仮タイトルを聞いて、みんなきょとんと(笑)。監督も、これ大丈夫かって。ラテ欄に載ると2行にならないかなとか、月並みなことを考えたんですけど。電話で山田先生が、時が立ちどまらないからいいことも悪いこともあるというメッセージと言われまして」

山田「どんなタイトルにも、いつも意見が出ますね。ぼくは、他と似てないからいいかなとか(笑)。幸福も絶望も片方だけということはなくて」

 

【ドラマの展開について】

堀川「難しい脚本ですけど(キャストの)みなさんがよく読んでこられて、演技の質に注文をつけることはなかったですね。中井さんは山田さんの作品に慣れていらして。

 振り返ってみると、ホンには不思議なところがあって、兄さん(渡辺大)が亡くなって、弟(神木隆之介)が兄さんの恋人(黒木メイサ)とできるって大胆ですね。ラストで柳葉(柳葉敏郎)さんは転職する。普通の災害ものなら柳葉さんは漁師として再出発するのに、やめて大工になると」

内山「山田先生は、震災に遭うことでよかったというとおかしいけど、本当に自分の向いていることに気づいた人もいたはずだ。漁師に向いてないと気づいた人もいて、それがリアルな人生だ、と」

山田「神木さんは、漁師をやりそうにない(一同笑)。橋爪(橋爪功)さんのおじいちゃんはやめろって思ってる、そういう形で終わるのがいいなって。

 兄貴の嫁さんになる人を好きになる、戦争で兄が戦死すると弟がお嫁さんと結婚するというのがあったので、ぼくはそれを使いたかった。不思議かもしれないけど、あることですよ、と。しかも黒木さんだし、とっぴでも(「結婚してください」と)言ってみようと。仮設に入ったばかりだし。

 黒木さんと神木さんのラブシーンは、みんな見たくないかなと(笑)。親たちがふたり(の恋愛)を阻止して先に進めないのは、親の勝手で保守的ですね。でも、我を失ってるっていうのもあると思うんで、そういうのは時間を置かなきゃいけない。親が現れるシーンで、ふたりは目が覚めたようにすっと離れる。だからラブシーンも入れなかったです。神木さんが青森へ行くのも、親の知恵ですね。

 最後も、おじいちゃんは(神木さんに)漁師はやらせられないって言ってて、ハッピーエンドではないかもしれないです」

 

【キャスティング

山田「中井さんが出てくださるなら、中井さんを想定したほうが書きやすい。俳優さんに励まされて書いているところがありますね。中井さんと柳葉さんなら長くてもやってくださるかな、樋口(樋口可南子)さんは…とかだいたいの情報が頭に入っていますので(笑)」

中井「ぼくたち『ふぞろい』のメンバーはみんな山田学校を出てる。パート1はほんとに必死で、誰にも名前を知られてなくて、ロケ先で肩叩かれて、“誰出てんの?”って。自分がとは言えなくて“時任三郎さんと柳沢慎吾さん”と…(一同笑)。相手は“よろしく言っといて”って(一同笑)。その後(演技に)余計なものがからみついてきて、余分なものをやるのが芝居って思っていた時期もあって、そこを乗り越えて削ぎ落としていく。今回はどれだけ地方の人になりきるか、でしたね」

堀川「中井さんは本番以外では愉快な方で、現場は中井さんを中心にいい雰囲気がありました」

山田「私は何もしていません。すべて中井さんのおかげで(一同笑)」

中井「すべて私のおかげで(一同笑)。いちばん大きいのはプロデューサーの力です。役者同士で、控え室で気があっても、芝居をして息が合わないってことはある。今回は芝居でコミュニケーションを取れる人が集まりまして、内山さんのキャスティング力ですね」

内山「いえ、すべて中井さんのおかげで(一同笑)。リアルに映るように、山田先生に相談しながら、中井さんがいて、ここは柳葉さん、奥さまは初共演の樋口さんだなと。やはり中井さんですね(笑)」

 

【撮影現場のエピソード (1)】

堀川「橋のシーンは、ホンでは木立でしたけど、短い台詞も含めて出演者が7人。それで橋を思いついて、橋に閉じ込めればみんな勝手に動けないかなと。長いシーンは監督泣かせですね」

中井「俳優がいちばん泣きますよ!(一同笑)」

堀川「あ、そうですか(一同笑)」

中井「でも、よく見つけてきますよね。地図にもナビにもないような場所で、大正時代からあるような橋。ああいうのどうやって見つけてくるんですか。東京から2時間、公民館でみんな着替えて。朝8時から、寒かったですね」

堀川「ちょっと引きが多すぎたかな。山田先生のホンはどの台詞は軽く流す、どれを強調するって判断がしにくい。つないだら4分長くて、4分切るのがつらかった。(完成版では)ちょっとつなぎが短すぎるってところもありました。ここは切れる、ここは残さなきゃいけないとか区別がつきにくい。台詞がチェーンのようにつながってて」(つづく)

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