私の中の見えない炎

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「ビビを見た!」会(大海赫先生を囲む会2014)レポート

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 1974年に刊行された、『ビビを見た!』(理論社)。

 全盲の少年の目が見えるようになった。そのとき周囲の人びとは失明し、街に巨大な敵が襲来する。パニックのさなか、少年が列車で出会った謎の少女。そして…。

 『ビビを見た!』は、読んだ子どもたちに忘れ難い印象を残すトラウマ童話である。添えられた、赤と黒の挿絵(版画)の超絶技もすごい。長らく絶版だったこの作品は、多数の要望を受けて2004年に復刊された(ブッキング)。

 作・絵は大海赫(あかし)。他に『ドコカの国へようこそ』『メキメキえんぴつ』などブラックな童話で知られ、根強いファンを持つ。今年も新刊『歌えば魔女に食べられる』(復刊ドットコム)が刊行されるなど、80歳を過ぎても精力的に創作に取り組んでいる。

 その大海赫氏を囲むファンの集いが2007年から毎年12月に開催されており、筆者も常連さんから話を聞いて今年は参加させてもらうことになった。

 大海赫先生が「ビビを見たかーい!?」と問いかけ、「見たー!」とみなが返して会がスタート。まず大海先生のあいさつがあった。毎年こうなのかと思ったら、熱弁をふるうのは珍しいそうである(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りなので、実際の発言と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

大海「今回で8回目、1回で終わるかと思ったんだけど。

 ぼくは児童文学って言葉が大嫌い。体がかゆくなるんでね。児童というと、学校へ行ってる子ども。でも世界には、学校へ行けない子どもなんていくらでもいる。戦争や貧困がある。インドの子どもは、貧困で学校へ行けない。お母さんのお腹の子も胎児で、児童じゃない。

 大人になっても頭の中に子どもが住みついてる人がいる。成人式を済ませて、大人みたいな顔して大いばりで歩いてる。そういう人のために、童話を書いている。でも世の中は児童書なんてものをつくって、ひっくるめた。

 16世紀フランスのラブレーの『ガルガンチュワ物語』、スウィフトの『ガリバー旅行記』、あれも大人に向かって書かれている。日本の『お伽草子』や滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』も童話です。馬琴は失明しても、筆記者をそばに置いて書き上げた。

 ぼくは、あした死ぬかもしれない。だから力強く申し上げます」

 

 その後、大海先生の『大きくなったら、何になる?』(『メキメキえんぴつ』〈復刊ドットコム〉収録)の短篇アニメーションが上映された。原作がかなり忠実にアニメ化されており、背景がまだ彩色されておらず、ナレーションも入っていない状態であったが、それがかえって無気味な印象をもたらす。会場には制作したマジックバスのスタッフの方々も来られて、大海先生と話していた(スタッフの方は筆者の隣りにすわっておられたのだが、ほとんど話せなかった…)。

 会の後半、大海先生の手製のなぞなぞカルタが行われた。そのとんちのきいた問題には感嘆。

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 二次会にて大海先生は、ロバの登場する『プラテーロとわたし』(岩波文庫)を薦めておられた。先生はロバがお好きだそうで、みなに好きな動物を訊いて、変わった人が多いなと言われていた(みんな、何て答えたんだったかな 笑)。

 この会の1回目では、出席者に大海先生から版画のための版木がプレゼントされたという(!)。筆者の隣りにいた方は、その折りにもらった『ビビを見た!』の版木を持参していて、見せていただいた。

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 二次会で大海先生と奥さまはお帰りになり、筆者は新参者のくせに三次会まで出席。大半が年上の方々だったけれども、酔ったせいもあり、ついなれなれしく話しかけてしまった。みなさま、ありがとうございました。

 

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