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園子温監督 × 諏訪太朗 トークショー レポート・『ヒミズ』(2)

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【『ヒミズ』の脚色 (2)】

 園子温監督は、『ヒミズ』(2012)の原作者の古谷実氏とは映画の公開時に会っていなかったという。

 

「古谷さんは放任主義で、台本も読まないし何も言わない。古谷さんの色紙に“この映画大好きです”って染谷将太くんと二階堂ふみの顔が描いてあって、満足してくれたみたい。(最近)漫才を見に来てくれたときに、古谷さんとは初めて会った」

 

【『ヒミズ』の俳優たち】

「主役のふたりは、オーディション。染谷くんは変わってて、中学1年で『うつしみ』(1999)を見て、この監督の映画に出なきゃってゴールデン街に張ってたって、相当の変態(笑)。ゴールデン街では会ってなくて、『ヒミズ』で初めて会った。読書量も半端なくて、1日3冊読んで、ホテルの部屋が図書館になっちゃう。トルストイを1週間で読むとか、エリック・クラプトンみたいなタイプだね。本人はがんばってるんじゃなくて、愉しんでる」

 

 諏訪さんと染谷さんは、『ヒミズ』の前に『ノラ』(2009)でも共演している。

 

諏訪「『ヒミズ』の前に自主映画みたいなので、おれが失踪したホームレスの親父で、あいつは息子で中学生か高校生でおれを殺したい(という設定)。そのときすでに、こいつすげえなって。『ヒミズ』の先取りみたいな」

 

 園監督は『ヒミズ』に限らず、『紀子の食卓』(2006)の吉高由里子や『愛のむきだし』(2009)の満島ひかりなど新人を重要な役に起用している。

 

「二階堂は最初から結構うまかった。彼女は、トリュフォーのあれを見たとか言ってて、背伸び系だね(笑)。

 (自分は)厳しいと世間で言われるけど、厳しくしたのは満島と吉高、二階堂くらい。言ってよくなる人もいるけど…」  f:id:darakarumena:20140711020434j:plain

 園監督の『冷たい熱帯魚』(2011)では1993年に起きた埼玉愛犬家殺人事件の犬を熱帯魚に置き換え、血みどろの猟奇殺人が描かれた。『熱帯魚』で怪演した俳優陣(吹越満、でんでん、神楽坂恵、渡辺哲、諏訪太朗)が、『ヒミズ』では一転していい人役に配されているのには笑ってしまう(黒沢あすかのみ双方で悪人役)。

 

「(『冷たい熱帯魚』の人たちは)前世ではああだったけど、いまは幸せと(笑)。

 『熱帯魚』は、今年仕事ねえからやるか、と。ぼくは仕事なくて生活がかかってて、でも愛犬家殺人事件も興味なかったからな」

諏訪「でんでんさんも、『冷たい熱帯魚』から(オファーされる)役のレベルが変わったって、しみじみ言ってた」

「(渡辺)哲さんは東京工科大だから二階堂の宿題を見てて、数式を書いて、二階堂がなるほどって。哲さんってそんな人なんだ」

諏訪「キャスティングで、こいつにこの役を持ってくるとか、天才だなと。園子温は異端と思われがちなんだけど、真ん中をやってるよね」

 

 非道な父親役は、テレビ『Q10』(2010)や『紙の月』(2014)などの光石研

 

諏訪光石研ちゃんは『博多っ子純情』(1978)で主役をやってて、『Helpless』(1996)で凶暴な役。研ちゃん、ああいうところがある。いまはいいお父さんばかりだけど」

「(次作『希望の国』〈2012〉にて主演した)夏八木(勲)さんには(『ヒミズ』では)マタギをやってもらおうと思ってたんだけど、ジャリの生活にマタギはいらんな(一同笑)」

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【その他の発言】

「映画では余計な要素を排除した。まきちゃん(渡辺真起子)とモト冬樹さんは、いい芝居してたけどカット」

 

諏訪「おれが夢見るじゃない? その後、『七人の侍』(1954)みたいにヤンキーと戦う。ずぶ濡れになって泥だらけでやったのに、全部カット(笑)。『希望の国』でも伊勢谷友介さんとでんでんさんとおれのシーンでは、厭な予感がしたよ(笑)。

 雨のシーンは、当たる役者も大変。でもあのくらいやらないと、(雨が画面に)映らないね」

「あのころ雨が好きだった。『ヒミズ』、『恋の罪』(2011)、『熱帯魚』は雨三部作(笑)。雨は十分やったなって、『希望の国』では降らしてないです」

諏訪園子温のすごいところは、『希望の国』を撮って、NHKのドキュメンタリー(ETV特集『映画にできること 園子温と大震災』)にも出た後で、『地獄でなぜ悪い』(2013)が来る(笑)」

 

 東日本大震災をモデルにした『希望の国』の次作『地獄でなぜ悪い』は、やくざに殺されそうになったという監督の実体験をモデルにしたコメディ作品で、諏訪さんをはじめ二階堂ふみ、渡辺哲、でんでん、神楽坂恵など『ヒミズ』組も出演。この時点では、まだ公開待機中であった。

 

「いまの日本映画はわが道を行き過ぎ。だいたい映画を見て映画的っておかしい。絵画を見て絵画的、彫刻を見て彫刻的って言わないでしょ。そんなこと言ってるのは映画だけ。あいつの映画は映画的じゃないって言うけど、おかしいよね」

 

 『ヒミズ』によってまた新たなステージに踏み込んだ感のある園監督は、昨年もテレビ『みんな!エスパーだよ!』(2013)、映画『地獄でなぜ悪い』を発表、今年も映画『TOKYO TRIBE』(2014)など新作が待機中。何となく中毒を起こさせるようなディープな映画世界であるが、一方でピュアな『ヒミズ』のような振り幅を持つ園作品は実に油断がならない。

 

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