私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

園子温監督 × 諏訪太朗 トークショー レポート・『ヒミズ』(1)

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 住田(染谷将太)は、借金を重ねて家に居着かない父(光石研)や使い物にならない母(渡辺真起子)に代わって、中学3年生にして家業の貸しボート屋を営んでいる。そんな彼に好意を寄せ、邪険にされてもおせっかいを焼く同級生の茶沢さん(二階堂ふみ)。あるとき、住田の父が戻って来るが、相変わらず暴力をふるい息子を罵倒する父を、住田は手にかけてしまう。

 古谷実の同名マンガ(講談社)を映画化した『ヒミズ』(2012)は、園子温監督としては珍しく正調青春ドラマの力作である。『恋の罪』(2011)や『冷たい熱帯魚』(2011)など園作品はバイオレンスやエロティックな場面が目立つけれども、『ヒミズ』ではエロスは抑えられた(バイオレンスはある)。また、『熱帯魚』の結末は、息絶えた父親(吹越満)を前に娘(梶原ひかり)がその死を嘲笑するというものであったが、『ヒミズ』ではラストにて若い世代(やかつて若かった世代)にストレートなメッセージが叫ばれており、観客としてはかなり意外なものであった。正直、前半は演出が空回りしていて見るのもつらかったのだが、後半とラストでかなり巻き返した感がある。

 川に飛び込んだり、泥まみれになったり、泣き叫んだりの染谷将太二階堂ふみが素晴らしい。熱演するのみでなく、終盤のふたりっきりで語らう場面などの呼吸もよく、このふたりをメジャーにしただけでも本作の功績であろう。

 

 昨年6月、川崎市にて『ヒミズ』の上映と園監督と諏訪太朗氏のトークショーが行われた(いろいろ?あって、いまさらの記事化である)。

 諏訪太朗氏は園作品の常連で、『ヒミズ』の他にも『ちゃんと伝える』(2009)、『冷たい熱帯魚』などに登場。園作品以外でも多数の映画・テレビに出演していて、『おくりびと』(2008)のように著名な作品からクレージーな『発狂する宇宙』(2001)までこなす実力派。『仮面ライダー電王』(2007)や『ウルトラマンマックス』(2005)、『牙狼 MAKAISENKI』(2011)など、特撮ドラマでのゲスト出演も印象深い(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや、整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。 

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【『ヒミズ』の脚色 (1)】

 園監督は、映画は悪意と狂気に満ちているようだけれども、トークは軽妙で意外であった。

 

「最近芸人デビューして、座・高円寺水道橋博士とかと出たんだけど、芸人枠の仕事が増えてきた。監督から芸人へ」

諏訪「(ビート)たけしさんの逆だね(一同笑)」

 

 園監督にとって、原作の映画化は『ヒミズ』が初である。

 

古谷実さんのは、『ヒミズ』以外にもいろいろ企画が来ていたんだけど、『ヒミズ』がいいとこっちから持ってった。古谷さんにとって、『ヒミズ』は『行け!稲中卓球部』のリアル版だと思うね」

 

 『ヒミズ』は、2011年の東日本大震災後に撮影され、瓦礫も画面に登場する。

 

「あんなことが起きているのに、平然とやるのもなって。原作では、冒頭から“普通の人は生きていれば交通事故に遭ったりすることはない”みたいなことが書いてあって、(原作が発表されたのは)2001年だから」

 

 脚本も園監督が担当しており、原作との変更点は多い(やはり原作を知る人の賛否は分かれているようである)。ヒロイン・茶沢さんが異常な母(黒沢あすか)の下で育ったというのは、映画オリジナルの設定である。

 

「ださい自分でもかわいい女の子に好かれるっていうのだけど、バックボーンがいるかなと。茶沢にも感情移入できる要素をつくらないと。黒沢あすか(演じる母親)があの首切り台をつくっていたのは、知り合いの人の実話。取材すると、(実際に)いろんなことが起きてるね」

 

 主役コンビの周辺にいる同級生のキャラは、みな大人になった。

 

「染谷と二階堂の周りに、若い人がいると孤独感が際立たない。若い人は、あのふたり以外は一切入れないと。ゆるくなってしまうんで、おまわりさんもなくしました。

 あと、原作ではセックスしまくってる。でも昔からセックスに執着はないです(笑)。私生活では執着があるけど、映画では面白くない。『愛のむきだし』(2009)のふたりも手をつないで終わった」

諏訪「自分でするのも面白くないよ(笑)。おれはピンク映画でデビューしたけど、(高橋)伴明さんには(撮影中に)怒られる。アフレコだから、“乳首隠すな”とか(笑)。

 園監督は、本読みとかリハでは細かく言うけど、本番は自然体ですね」

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 劇中で渡辺哲と窪塚洋介が夜盗に入るのは、ハーゲンクロイツを飾って「原発サイコー」などと叫ぶ男の部屋。

 

「殺されるなら、すごい悪人にすれば見る人も厭な気にならないだろうと。だから、ナチス好きの薬の売人に(笑)。

 カミュみたいに、暑かったから父親を殺したとか、そういう不条理感はいらない。原作みたいに、連載マンガは読者を驚かせなきゃいけないからそういう要素も必要になるけど。

 バスで(通り魔の男が中年の女〈木野花〉を)刺すシーン、原作では夢なんです。でも映画の中で、わざわざ夢にするのもなって。だから、どっちにとってもいいよと。

 それと原作の化け物は、アーティストに頼んで検討してみたけど、結局なしにしました」

 

 原作ではラストで主人公が自殺するけれども、映画版では自首を決意。

 

「ラストでは自殺させようか迷って、現場でもギリギリまで迷って。2011年に自殺させるのはどうかなって。『希望の国』(2012)では自殺するけど。さんざん迷って、ああなった。

 (ハッピーエンドと言われるが)自分ではあんまりハッピーじゃないと思うけど。いまはピュアな二階堂も、最後まで(主人公に)つき合うかな。何回かは面会に来るかもしれないけど…。それも含めて、人生だね。昔の恋人っていうんだったら、それでいい」(つづく)

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