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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

対談 藤子不二雄A × 石子順(1990)・『少年時代』(1)

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 漫画家の藤子不二雄A先生は、今年3月10日で生誕80周年である。それを記念して、というわけでもないけれど、藤子A先生が登場された対談記事をいくつかアップしてみたい(そんなにたくさん所有しているわけではないが…)。

 以下に引用する対談は、A先生が原作・プロデュースを手がけた映画『少年時代』(1990)の公開時に映画誌『シネ・フロント』(シネフロント社)の第165号に掲載されたものである。(お相手は漫画評論家の石子順氏)。原作の『少年時代』(中央公論新社)は、柏原兵三の小説『長い道』(桂書房)に感銘を受けたA先生が同作を漫画化したもので、主人公の少年の壮絶な疎開生活を描いた傑作である。対談では、A先生が漫画・映画双方についてかなり詳しく話しておられて面白い(他で語られた内容も混じっているけれど)。長いので、何度かに分けて引用したい。

 漫画と映画の『少年時代』をめぐって

 プロデューサーの仕事は漫画家とは百八十度ちがっていた

石子:藤子さんといえば、映画少年であって、ずっと映画を見てこられて、雑誌や新聞にも映画のことを書いていらっしゃいますね。そういうかたちでずっと映画と関わっていらっしゃるんですが、今回はじめて映画製作というものに関わられて、いかがですか。この映画製作の体験というのは?

 

藤子:まあ、大変でしたね。

 なんでかというと、僕らの漫画の仕事というのは、一人で机にむかって、ひたすら集中するという、個人的な仕事なんですが、プロデューサーというのは基本的に、百八十度違うんですよね。外に出ていって、人に会って、いろいろなお願いをするということがあまりにも多いんで、もうほんとにびっくりしました(笑)。僕らは漫画を三十ン年やってますけど、だいたいは頼まれることが多いわけですよ。これこれこういうことで書いてくださいと言われ、そこでなんだかんだと話していて、それじゃあ、こういうふうに書くかと、そういう感じでやってたわけでしょ。

 ところが、映画のプロデューサーをはじめたら、最初からお願いするわけですよね。いちばんにの元は、出資、お金の問題がありますから、まず各社を回って、こういう映画作りますんでお金出してください。もうそこからはじまったんですから(笑)。

 

石子:お金集めからはじめられたのですか。

 

藤子:そうですよ。それからあと、もうただただお願いばかりでした。監督の篠田(正浩)さんに会ってお願いします。山田(太一)さんに会ってお願いします。

 そういうかたちで、いろいろなことを、ほとんどお願いして回ったわけです。

 

石子:監督には篠田さんと、最初から決めていたのですか。

 

藤子:ええ。映画少年、映画青年のころから、篠田さんの映画はすごく好きでね。『乾いた花』というのが初期のころにありましたでしょ。あの映画が僕は大好きで、あれ以来、篠田さんのファンだったのです。それから、最近『瀬戸内少年野球団』というのを撮られた。これはテーマは少年野球でだいぶ違いますけど、あの時代の少年たちを描いていらっしゃる。そういうことで監督をお願いしたのです。

 シナリオライターのほうは、監督とお話しした最初の段階で、篠田さんと双方で候補を書いて見せ合おうということになって、書いた名前がどちらも山田太一さんだったわけです。で、それじゃあ山田太一さんにお願いしてみようということになったのですが、篠田さんは大船時代に、二、三本助監督でついた山田さんを知ってるだけで、それ以外はまったくいっしょに仕事をしたことがないとおっしゃるし、山田さん自身、原作のあるものはやらない主義で、全部、オリジナルの本ばかり書いていらっしゃるんですね。ところが、この企画は原作に小説はあるわ漫画はあるわで、とてもじゃないが引き受けてもらえないだろうと思ったんです(笑)。でも、とにかく候補にあがったんだから、いちおうお願いしてみようということになって、お話したら即座に引き受けてくださった。これは自分の物語のようだから、絶対僕が書きますとおっしゃってくれて、うまくいったんですけど、ま、そういうふうにお願いばかりやっていました。お願いしたことがほとんどOKで通ったので助かりましたが、いままでの仕事と基本的に違うので大変でした。

 ですから、当初、プロデューサーの仕事をはじめた段階では、いっさい漫画のほうはやめて、この期間、映画のほうに専念しようと思ったのです。ところが、やっぱりいろいろと編集部との義理があって、なかなかやめるということにはならなくて…。

 

石子:それはそうでしょう(笑)(つづく) 

少年時代 完全版 1 (Fukkan.com)

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