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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

野沢尚 インタビュー(1999)・『氷の世界』(2)

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【かつてのテレビ作品】

 『親愛~』がちょうど結婚3年目だったんですよ。で、目の前の女と共に一生を生きなければいけないのかと考えたときに、恋人時代とは違う夫婦の恋愛をしないと、40、50年もとても一緒には生きられないという思いがあって。じゃあ、それは何だろうというのがテーマだった。次の『素晴らしきかな人生』では、家族から放たれるということを描きたかった。家族が家族として生きていくために、家族にこだわるんじゃなくて、1人ひとりが旅に出ていくという。放たれて、行って、また戻ってくればいいじゃないか、と。そういう存在として夫婦や家族をとらえようとした作品です。僕の場合、その時どきに感じていた自分の実感が作品にかなり出るんですよ。で、『この愛に生きて』のころは、自分と女房をつなげているのは、もう子供しかないんじゃないかと思って。じゃあ、その子供がいなくなったら夫婦は何でつながるんだろうというのを考えたドラマですね。打ち上げのときに(出演者のひとりの)山本圭さんに、ドラマでも子供を殺すなんて絶対にやっちゃいけないと言われて、それは結構グサッときたんですけど。ただ、子供を殺すというシチュエーションがないと、やっぱり自分の言いたいことは言えませんでしたからね。そういう風に3作夫婦の話をやってきて、ちょっと夫婦という関係に夢を見ようと思って作ったのが、『恋人よ』。結局最後まで抱き合わない、男と女が小指の温もりだけでつながるという…夫婦のロマンみたいなことを最後にやって、とりあえず夫婦というテーマは自分の中では終わったかな、と

 

【小説について】

 映画の脚本を自分でノベライズした『ラストソング』というのもありますけど、一番最初に書いた小説は『恋人よ』の原作ですね。あれは先に小説で原作を書いて、それを自分で脚色したんですよ。で、そのくらいから、乱歩賞を意識して書き始めて3年目にやっとという感じですね。『青い鳥』をやった年に取れました。脚本と小説を同時に書いていたことは、非常に精神衛生上よかったですね。人と会うのが面倒になったらこもって小説を書いて、それで人恋しくなったらまたドラマを書くために人に会うという。それが交互に入っていると一番いいですね。今後は、比重としては小説が多くなるとは思いますが、ドラマをやめるということは多分ないでしょう。自分の原作を自分で脚本にするという形でやっていくと思います。脚色というのは、まず原作を否定するんですよ。そうやって核心をむき出しにする。肉を削いで骨をあらわにするのが脚色の仕事なんですよ。自分の小説を自分で脚色するのは難しいよって山田太一さんに言われたんですが、まあ媒体が違うから別物と割り切って、ドラマでは違う形の作品ができると、僕は思っているんですけどね

 

【『青い鳥』(1997)について】

 (『青い鳥』のような)ロードムービーというのはドラマ制作者のあこがれですからね。お金と手間をかけて、それをやってやろうという。これが成功すればドラマも広がるなって気合いも入ってたんですけど…『青い鳥』に関しては消化不良でしたね。幸せというのはなんだろうというテーマがあって、僕はそれを最後に豊川豊川悦司氏に言わせたかった。幸せとはどういうものかということを極めて具体的に脚本の中に書いたんです。でも、それを彼は無言で分らせたくて、結局、削ったんですけど…。やっぱり、言わせなければ表現できなかったというのが、僕がそのシーンを見た感想です。まあ集団作業の一員としては、しょうがないなとも思いますけど。逆に集団でやるので、自分では思ってもいなかったものができるときもあって、それが楽しいですよね。このドラマでも土井裕泰監督が非常に優秀な方で、映画以上の重量感のある映像を作り出してくれた。またTBSに行くときは、あのチームで、今度はフラストレーションを解消しようと思います

 

【最近作『眠れる森』(1998)と最新作『氷の世界』(1999)】

 あれ(『眠れる森』)中山美穂木村拓哉という役者ありきで出発したドラマで、2人とも恋愛ドラマに飽きていたこともあって、ミステリーという形になったんです。連ドラでミステリーをやるというのは、ほとんど前例がなかったから、手探りしながらでしたけど、ただ、最終回までのプロットをあらかじめ作るという僕のやり方が一番生きた素材だったし、準備期間も十分かけられて、納得のいく仕事でしたね。実は『青い鳥』と『眠れる森』はテーマ的につながってるんですよ。僕は『青い鳥』で、人生はやり直しができるということを書いたんですけど、見終わって、そんなに甘いものかと思ったんですよ。人間はやり直しなんかできないんじゃないかって。だから『眠れる森』は、人生はやり直しなんかできなくて、すべてを抱えて生きていくしかないという話だった。それでも生き続けろという、ね。それはユースケ(ユースケサンタマリア)さんと木村さんの最後のシーンに集約されている。僕はそれがやりたかったんです。で、今度の『氷の世界』というのは、またそのつながりで…やり直しのできない人生を抱えて生きろっていうのは、言うのは簡単だけど、何か支えがなきゃ生きてはいけないだろう、と。それは何だろうというのがテーマ。要するに、それが“愛”なんだ、と。そうやって本物の愛を見つけていく主人公の物語ですね。タイトルは、人の体や命が簡単に金に変わってしまう、氷のように非情な世界という意味。保険金犯罪をモチーフにしてるんですけど、最近特にひどいですからね。書いてて、こんなことは起きないだろうということが現実に起きちゃいますから。そういう非情な世界の中で、人間は何をよりどころに生きていくのか。結局は、愛がこの世を救っていくのではないかというのをやってみようかなって(以上、『TV LIFE 秋ドラマの本』〈学習研究社〉より引用)

 

 出演者に苦言を呈されて「グサッときた」という話に、野沢尚氏の繊細な一面が伺えて痛々しく感じられる。

 氏のインタビュー記事はまだいくつか手元にあるので、順次紹介していきたい。 

氷の世界―シナリオ集〈3〉 (幻冬舎文庫)

氷の世界―シナリオ集〈3〉 (幻冬舎文庫)