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小中和哉 × 切通理作 トークショー レポート・『赤々煉恋』(2)

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 映画『赤々煉恋』(2013)のラストは、観客の解釈が分かれるものになっている。

 

切通「最後はさわやかに終わった。救いを用意してないので、もっと陰々滅々としていてもいいのに」

小中「見る方によって、受け止め方が違う。(主人公が)成仏したって思う人もいるし、見ていて打ちのめされたっていう人もいる。あんまり厳しく終わらないようにつくったつもりなんですけど。

 原作はもっとどつぼにはまるような終わり方なんです。(主人公が)自殺した理由も判らなくて、なんかアンニュイだ(から自殺した)みたいな話で。これを長編映画にすると『ミスト』(2008)みたいで、あれは面白い映画ですけど、ちょっと厳しいかなと。

 最初は『四月怪談』(1988)みたいなハッピーエンドにしようかと思ったけど、朱川さんがそれじゃ自殺してもいいことあるじゃないかって。それでああなったんですね。何とか救おうと思ったんですけど、やっぱり自殺はいけないっていう視点は入れなきゃいけないと」 

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 ラストで、主人公(土屋太鳳)は母(秋本奈緒美)に“ごめんなさい”と謝り、母は何かを感じる(この件りは、原作にはない)。そして朝の風景が映し出され、主人公がそれからどうなったかは明らかにされない。監督の問いかけにその場の観客が挙手すると、ハッピーエンドと受け取った人とバッドエンドと感じた人とで半々であった。

 

小中「あのまま(現世でさまよって)苦しむのか、昇天したのか。どちらでもいいんです。見られ方って、いろいろですね」 

切通「(ハッピーエンドかバッドエンドかとは別に)朝になったことで、映画を見てきた達成感がある気がしました」

小中「 最後に“あのころ、たのしかった”という吉田羊さんの台詞があるんですが、自殺に囚われているけど、その台詞でポジティヴになってる。これは周囲の人の話でもあるんで、お母さんたちがこれから立ち直る、その一歩があればいいかなと」

 

 最後に主人公の部屋には、花が置かれている。前半の回想シーンで、お母さんはいいことがあると花を生けるという台詞があり、伏線になっている。

 

小中「机に花があったのは、いいことがあったという意味です。“ごめんなさい”の声が聞こえたっていう、そういうつもりですね。お母さんも新しい一歩を踏み出せるって、(見ている人に)思っていただけるかなと。

 遺族の方々は、なぜ自殺した、自分のせいじゃないかと思ってしまう。でも自殺で亡くなった人も、生きていた中では充実した日々もあっただろうから、そういう思いを入れさせてもらったんですね。

 朱川さんはご覧になって、(主人公は)昇天したと思われたみたいですね。救いのあるラストでよかったと」

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 現場でのつくり方もドキュメンタリーのように機動的にして、いままでの作品と変えてみたという。

 

小中「カメラは藍河兼一さんという、ご自分でピントを合わせられる人です。

 いままではガチガチにカメラワークを決めていたんですけど、今回は役者にも自由な気持ちで動いていいよって言って。

 今回は自主映画でもいいから撮ろうと思いました。いまは昔と違って役者とカメラがあれば撮れるっていう時代ですし、少人数制でもクオリティは負けないぞって」

 

 切通氏も言及しておられたが、朝の街など、実景の映像が強い印象を残す。

 

小中「実景(の撮影)には、贅沢に時間をとっています。

 フランシス・コッポラがプロデュースした『コヤニスカッツィ』(1982)という映画があって、90分間ナレーションなしで、モンタージュの教科書みたいなんです。実景を並べるだけで、それが文明批評になっている。それと、『ベルリン 天使の詩』(1987)ですね。そういうふうに、ドラマティックじゃなくて、ポエティックな作品にしようと」

 切通氏が「DVDのコメンタリーでお会いしたとき、生本番かと思ったら、ひとことの意味を言うか言わないかで、小中監督がすごくねばってて。ワンカットはどうしてこうなったかに、すごく意味があるんです。妥協されない」と言われた通り、小中監督は生真面目に答える姿が印象的で、聞いているこちらも力が入った。

 制作条件は大変そうではあったけれども、心にぽっかりと穴をあけるような忘れがたい作品になっていて、またこのような青春ファンタジーのジャンルで挑戦をつづけてほしい。

 

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