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山田太一 インタビュー(2002)・『彌太郎さんの話』(1)

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 脚本家の山田太一先生は、『異人たちとの夏』(新潮文庫)や『飛ぶ夢をしばらく見ない』(小学館文庫)、『終りに見た街』(同)など小説も書いておられるが、シナリオ作品では比較的リアルな話が多いのに対して、小説作品では不可思議な超常現象が頻発しているのが特徴的である。小説『丘の上の向日葵』(新潮文庫)がご自身の脚色でテレビ化された際、テレビだとラストですべて夢だったかのような趣向にはしにくい(小説ならば可能)と言われていたのを覚えている。

 以下のインタビューは、2002年に不思議譚『彌太郎さんの話』(新潮文庫)を上梓された折りのものである。BOOKアサヒコムというサイトに掲載されていたその記事は、いつのまにかなくなってしまったようなので、本欄にて引用したい。山田先生の発言はノーカットだが、質問文は字数の関係上、申しわけないが少々割愛させていただいた(質問は、編集部のものと読者から寄せられたものとが混じっている)。

 

Q:物を書くようになったきっかけはどんなことですか?

 

A:高校生のころから、何となく「できたら小説家になりたいな」とは思っていました。でも、それは、あの時代の文学少年なら誰でも持つ夢のようなもので、別に自信があったわけじゃないんですよ。

 大学に進んでから「学校の先生になろう」と考えるようになって、母校の湯河原中学で一週間くらい教育実習をしたこともあるんです。だからといって教育的情熱があったわけではなく、自分の能力がわからなかったので、教師以外に何をやれるのかもわからなかったんです。学生にとって、細かいところまで見えている職業というと親の職業と学校の先生くらいじゃないですか。どうもぼくは親の職業については自信がなかったので、それで、「保険」というと教職をされている方々に失礼なのですが、教員の免許だけは取っておこうと考えたんです。

 小説のまねごとやその他の雑文を書くようになったのも大学生のときです、同人誌というほどのものじゃないのですが、教育学部の国語国文科で出していた文集にようなものがありまして、そこに寺山修司さんらと一緒に文章を寄せていたんです。私が書いた小説は非常に短いもので、当時流行っていたアメリカのノーマン・メイラーヘミングウェイの作品のような簡潔な書き方のものです。寺山さんは、そこで発表した俳句をその後本に載せていたりと、あのころから完成度の高いものを書かれていたのですが、私の小説は、とても人に見せられるようなものではありませんでした。 

藍より青く〈上〉戦後ニッポンを読む

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Q:テレビドラマの脚本家として活躍されていた山田さんが、41歳のとき、初めての説『岸辺のアルバム』を書かれるようになった経緯についてお話ししていただけますか?

 

A:実は『岸辺のアルバム』以前にも小説を出したことがあるんですよ。『藍より青く』というNHKの朝の連続ドラマ(72年春放送開始)の脚本を1年ぐらい書いていまして、それを小説化してほしいと中央公論社の人に言われ、ドラマが放送されている最中に上下巻の本を書いたんです。最初は、他の人にノベライズさせてはどうかと言われたのですが、ぼくは他の人に頼むのが嫌だったので、午前中はドラマ、午後は小説…といったハードなスケジュールで書き上げました。ただ、あまりにドラマに深くからみ合っていたので、小説を書いたというより「自分でやったノベライズ」という感じがして、あまり小説のリストに入れたくないような気分なんです。

 それに対して、『岸辺のアルバム』は、テレビのライターとしてそこそこキャリアを積んで、はじめは自由感のあったテレビドラマにあれこれ閉塞感を感じていたころ、東京新聞の方に「連載小説を書いてみないか」と言われて書き始めたんです。こちらは、小説を完全に書き終えてからテレビドラマにしました。小説の連載は150回くらいの約束だったのですが、今も昔もそんな約束は守られないということをぼくは知らなくて、絶対に150回で終わらせなきゃいけないと思って書いたので、入りきらなかったエピソードなんかもあったんですよ。そうした点も含めて、自分の小説を批評的に見ながら脚本を書くことのできた喜びがありましたね。だから、ドラマの脚本のほうがいいものを書けたという思いが主観的にはあります。(つづく)  

 

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岸辺のアルバム (光文社文庫)

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