私の中の見えない炎

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園子温 講演会 “地獄でなぜ悪い けもの道の歩き方”レポート・『けもの道を笑って歩け』(3)

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【自主映画と『自殺サークル (2) 

 その頃のサンフランシスコにZ級のレンタルビデオを貸してる店がありまして、それを見てたら、クリストファー・リーとか『ジョーズ』(1975)を思い出して。若いときはゴダールとかを見てたけど、自分の原点はこっちだと。そこで『自殺サークル』(2002)を撮りました。新宿駅のホームに100人の女子高生を立たせた。許可が下りるわけないから、駅の人に不審がられて、ぼくは「中央線オタクだから撮ってる」って。「(女子高生は)修学旅行でしょう」って。3日くらいでばれましたけど、東京ガガガの経験があるから、不安はなかったですね。

 40代になって、やっと(商業映画の)デビュー作が撮れたんですよ。

【日本映画の現状】

 黒澤明の時代と違って、いまの日本映画は国際的に無視されてる。ガラパゴス状態で、独自の道を行き過ぎてる。音楽もそうですね。

 

 (アメリカに)ジャクソン・ポロックという飛沫を飛ばして絵を作る人がいて、当時はピカソもいたのに、アメリカでは写実絵画が主流で、ヨーロッパに遅れていました。そこで、物理学や数学のようにアメリカ絵画なんてものはない、アメリカ絵画というがアメリカ物理学はないという意味のことを言っています。

 

 ヴェネツィアへ行ったとき、『テルマエ・ロマエ』(2012)が上映されたけど、外国人はよく判らない。真面目な雑誌の人が「主人公(阿部寛)がイタリア人に見えない」って、それは当たり前(一同笑)。あれは阿部寛がイタリア人を演じるから笑えるっていう、日本人だけに向いた映画ですね。

 

 ぼくは他人の映画を真似したくない。自分だけでも新しいものをつくりたい。

 いま小津的な映画って言うけど、絵画でセザンヌ的って言ったらダサいって意味になる。日本的な伝統を守ることが多くてよくないなって思います。

 伝統を守るだけならともかく、役者も同じ人ばかり使う。アメリカの『スタートレック』、『24』、『ER』は無名の人を使ってつくった。『ER』によって、無名のジョージ・クルーニーが有名になりました。

 歌手が主役の映画も多いですね。向こうの大作映画でそんなことないですよ。役者のプライドを育てるために、それをやってはいけない。

 

【役者論】

 日本映画のつまらなさは、新人を育てないからです。新人を育てると、有名になっても呼び捨てにできるし、夜中に酒飲もうとか、他の人にはできないですね(笑)。

 ぼくは新人を育てるのが好きで、必ず新人を使っています。最近、3日前まで撮っていた『TOKYO TRIBE』(2014)でも一部有名人がいるけど、ほとんど新人です。ただ竹内力叶美香中川翔子窪塚洋介の家族がいて、それが濃い(一同笑)。

 

 (『紀子の食卓』〈2006〉の)吉高由里子は、ただのコンビニのバイトでした。オーディションには当時アミューズが押してた○○さんも来てたけど、吉高が来たときに決めた。他の人は反対したけど、この『紀子の食卓』がデビュー作になりました。

 吉高に毎週詩を書け、文芸書を読めって言ったら、それを2年つづけて、ツイッターが詩的になりましたね(笑)。

 

 (『ヒミズ』〈2012〉と『みんな!エスパーだよ!』〈2013〉の)染谷将太は、ぼくがよく行くゴールデン街の飲み屋で張ってた。ここによく来るらしいって。当時のぼくは、まだ有名じゃないのに。

 何が好きって訊いたら、クロード・シャルルが好きだって。(ロケ先の)ホテルの彼の部屋は、サリンジャードストエフスキーで図書館になってた。努力してるって人はダメ。彼は努力じゃなくて好きだから、他の人が勝てるわけないんですよ。

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 【今後の創作】

 去年、『ヒミズ』と『希望の国』(2012)という、3.11をテーマにした作品を2本つくって、これからもつくりたいと思うんです。でもやりすぎると山本太郎になるかな(一同笑)。

 『希望の国』では南相馬に鈴木さんという、(20km)圏内と圏外で家が分断されてしまったという人がいた。それを見て、原発の不条理が描けるなと。これを描ききって、(その後)エンターテインメントをやりたいと思ってつくりました。

 

 これから年末に、子ども向けファンタジー映画を撮る(一同笑)。しばらく社会問題と関係ないものを何本かつくってから、あれから何年後みたいに3.11以後をテーマに撮りたい。とは言いつつ、そろそろ映画にも飽きたので、ヘビメタバンドでデビューしたいとか思ってて(一同笑)。

 

 映画はハードでも、園監督の語り口は軽妙で、満場の聴衆はみな惹きつけられていた。最近は水道橋博士とタレント活動もされているだけあって、聴く人を愉しませる芸人っぽい資質もお持ちなのである。

 日本映画界への批評的な眼は、なかなか他の作り手に見られないもので、今後も一石を投じるような作品をぜひつくっていただきたいと思う。

けもの道を笑って歩け

けもの道を笑って歩け

 

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