私の中の見えない炎

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原恵一監督 × 末吉裕一郎 × 中村隆 トークショー レポート・『河童のクゥと夏休み』(2)

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【中村隆氏と背景美術 (2)

 『河童のクゥと夏休み』(2007)には、河童だけにクゥが川や池で泳ぐシーンも何度かあるが、水の表現が困難であったという。

 

「大変だったよ、水は。手間がかかって。(周りの風景が)映り込む水面を描くには、周りも描かなきゃいけない。CGで波をつくると、結局何が映ってるか判らなくなっちゃうけど」

ムトウ「波とかああいうのはフィルムよりデジタルのほうがいいね」

 

 自然の表現の他に、家や街の描写も中村氏の領域である。

 

中村「康一くんの家は、外観や玄関周りとか、うちをそのまま使いました」

ムトウ「あれ、中村さんちなんだ(一同笑)」

中村「川から上がった坂とか駅もそのままです。黒目川は、いまはちょっと変わっているけど」

「位置関係は、嘘をついてないんです。実写だと(ロケ撮影は)なかなか思うように撮れないこともあるんで、(現実の地理とは)違うところで撮ってつないだりするんだけど、アニメはそういう障害がない。

 (中盤で主人公が行く)遠野駅前もリアルにやってます。泳ぐ川は、ないんだけど。食堂とかは架空なんだけど、遠野市役所の人に、“あれはこの店ですよね。地元のおばあさんがあの山の形でわかると言ってた”とか(笑)」  

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【末吉裕一郎氏とキャラクター】

 末吉裕一郎氏も、中村氏と同じく『クレしん』シリーズや『カラフル』(2010)など、原監督と多数の作品で組んでいる。他に映画『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』(1985)、『2112ドラえもん誕生』(1995)、『ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』(2004)、テレビ『キテレツ大百科』(1988)、『TPぼん』(1989)など筆者が幼い頃からいまに至るまで、見たことのある作品が多い。

 

「河童は最初からあのデザイン。末広さんともうひと方に描いていただいて、末広さんのを使わせてもらった。

 末広さんが最初に描いてきたのは、シンエイ(の作品)によく出てくるような(デフォルメされた)絵だったんです。でもそうじゃないって言って、特徴のない人物にしてもらった。特徴のない人でいままでにないのをやりたい。最初は頭身も低かったけど、伸ばしてリアルに」

末吉「『河童』の前に『マインド・ゲーム』(2004)をやって、(頭身の高いキャラクターを描いていたので)それがよかった」

「生身の子どもの雰囲気を把握してもらおうと思って、何本か(実写)映画を見てもらったんですが、その中で末吉さんが食いついたのが塩田明彦監督の『どこまでもいこう』(2000)ですね」

末吉「あれは何回も見ましたね。

 (キャラは)あれしか描けない(一同笑)。クゥと紗代子は髪の毛とると同じ顔してますからね(一同笑)」

ムトウ「末広さんがちゃんと仕事してるかなって見たら、エロビデオを見てた(一同笑)」

末広「ぼくの机は奥だから、見つからないと思ったら、原さんが後ろにいて。足音しねえ(一同笑)」

ムトウ「『河童』のとき、末広さんはずっと仕事してて、いつ寝てるのかなって」

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 原監督は、子どものキャラのリアリティにこだわっていた。

 

「靴もいまどきの子どもが履くようなのとか、夏だからサンダルとかね」

ムトウ「当時原さんに、いまどきの子はこういうの着るんだってローティーン向けの雑誌を見せられて」

「インターネットは自分ではやらないけど、周りはみんなやってるから何となくは判る。でももう6年経ってるから、いまの子どもは当たり前に携帯を持ってるけど、あのころはそうでもなかった。だから旅行の前に、お母さんに渡されてる。全般に固定電話ばかり出てくるのは、よくわからないから(一同笑)」(つづく) 

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