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庵野秀明 × 樋口真嗣 トークショー(岡本喜八監督特集)レポート・『激動の昭和史 沖縄決戦』『ブルークリスマス』(3)

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【『EAST MEETS WEST』(2)】

真嗣「『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)を日活の編集室で編集してたとき、当時はチェーンスモーカーだったから、タバコを吸うスペースで吸ってたら、そこにきたない小柄な若者がいたんです。

 市川崑さん(監督予定)の「長嶋茂雄殺人事件」が制作中止になったせいで『EAST MEETS WEST』(1995)の公開が早まって、オールラッシュのまま、はさみを入れる(編集する)前に公開されたんですね。だから、なんだこりゃって映画で。LDに収録されたインターナショナルバージョンを見ると、明らかに喜八さんのリズムになってる。その編集を向かいの部屋でやってた。

 で、きたない若者に喜八さんのサインを頼んだら、そいつが妙になれなれしい。何だと思ってよく見たら、(主演の)真田広之さんでした(一同笑)。きたないと言っても、顔が黒いだけだった(一同笑)。

 喜八さんは、不本意な状態でもかまわないと言ってたんです。でもディレクターズカットをやろうと真田さんが後押しして、昔はただ城から飛び降りる人だと思ってたんだけど。いいかな?(一同笑)」

庵野「真田さんいないから、大丈夫(一同笑)」

真嗣「(両バージョンを)見比べると、すぐ判る。撮っただけじゃダメで、編集でつないだ途端に変わる」 

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【勝野さん登場】

 ここで樋口尚文氏が「真田さんはいませんが…勝野さんがいらしています」と言って、筆者からそう離れていない客席から、『ブルークリスマス』(1978)の主演者・勝野洋さんがサプライズ登場。

 

勝野「勝野です。『ブルークリスマス』をやるってきのう聞いて、娘がパパ行ってって。きょうはこの後京都へ行くんで、あまり時間がないんですが」

 

 勝野氏の娘さん(勝野雅奈恵氏)は尚文監督の映画『インターミッション』(2013)に出演していて、その縁だそうである。

 

勝野「あれは結婚前だから、34年前です。その後(の岡本作品出演)は、『英霊たちの応援歌』(1979)ですね。私の事務所の社長が岡本一家(の元俳優)の阿知波信介くん(故人)で、その関係もあって。還暦を過ぎまして、すごいものに関わったなと改めて幸せを感じるきょうこのごろです(笑)。

 岡本監督と木村さんの気が合わないんじゃないかという(真嗣監督の発言)、しっかり耳に入りました(一同笑)」

真嗣「え」

勝野「木村さんはスパーンスパーンとものを言う、岡本さんは噛んで含めるように言う。目の動き、目がちょっと動くだけで捉えてくれる。目は心の窓って言うけど、本当だなって。いまも目薬をしてます(笑)。

 台本で“……。”が多い。監督は、台詞しゃべってるほうがらくだよって。そういうコミュニケーションでした。自分ひとりで生きてるんじゃない、丸い地球の上に立ってる。それを教わったように思います」

 

 勝野さん演じる主人公が、竹下景子さんと結ばれた後、ベッドに青い血がついていた。そこで勝野さんは、竹下さんの血が青いことに気づく。

 

真嗣「現場で誰が血をつけたか、覚えていらっしゃいますか。どの指に血がついてるかとか。(血は)毎回、見ていて息が詰まる。勝野さんの指示ですか」

勝野「そんなこと言える立場じゃないです。すべて監督の指示で、血のりの担当スタッフがいたと思います」

真嗣「あのシーンで大人になった気が…」

勝野「は?(一同笑)」

 

 ラストで虐殺があって、倒れた勝野さんからひとすじの赤い血、竹下さんからひとすじの青い血が流れ、交わり合う。

 

勝野「UFOによって決まるわけですね。赤い血は欲があって、他の人を蹴落としても何とも思わない。ラストは赤い血と青い血が混じり合って調和していく気がした。共存する意味ととったんですけど、若いころは」

真嗣「最後の勝野さんは、任務を全うする目じゃなくなってる。勝野さん、次は『地震列島』(1981)のときにでも」

勝野「『地震列島』、ああそうでしたね…」

 

 『地震列島』は特撮パニック映画の佳作で、そういえば勝野さん主演だった。ご本人もそんなのあったなというそぶりだった。

 尚文氏の『「砂の器」と「日本沈没」70年代日本の超大作映画』(筑摩書房)には、勝野さんと松田洋治さんという『ブルークリスマス』に出演したふたりとパーティで顔を合わせた際にその話をすると、「両人も微笑とともにうなだれ気味になった」と書かれていいて、勝野さんは『ブルークリスマス』を快く思っていないのかという印象があったのだけれども、年齢を重ねて、肯定的に捉えられるようになったのかもしれない。

『砂の器』と『日本沈没』 70年代日本の超大作映画

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 樋口真嗣監督はサービス精神旺盛で面白く(庵野監督があまり話さなかったのが残念だったが)、勝野さんも現れファンとしては満足のトークであった。

 だが、この日最も衝撃だったのは、この場に前田敦子さんがいたということである。筆者の近くに4、5人の若い女性のグループがいたので、もしかしてその人? 前田さんのAKB48在籍時の最後のシングルである「真夏のSounds good!」のPVを真嗣監督が撮っているので、その関係かもしれないけれども、いずれにしても、あっちゃんといっしょに『ブルークリスマス』を見たなんて、一生の想い出ではないか(笑)。

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