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中井貴一 トークショー(甦る相米慎二)レポート・『東京上空いらっしゃいませ』『お引越し』(2)

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【出逢いと『東京上空』(2)】

 『東京上空いらっしゃいませ』(1990)の撮影初日、大井町のロケ地でトレパンを渡されて、このシーンにトレパンは必要ないだろうと思ったが…。

 

中井「初日に朝から夕方まで、同じシーン(のリハーサル)を何度も何度もやって、1日目はカメラが回らず、2日目も回らず、3日目でようやく(OK)。こっちは、汗びっしょり。だからトレパンかと。1日で相米組が判りました」

榎戸「しかも、そのシーン(映画に)使われてないですからね(一同笑)」

 

 そして、新人に対する恒例のしごきが始まった。

 

中井「これこそ、いま騒がれてる体罰ですよ。柔道女子は弱い、牧瀬里穂は強い!(一同笑) ゴミ、クズ、カスですよ。影踏みのシーンで、牧瀬さんの感情が閉じちゃったんで、牧瀬さんをばしっと殴ったんです、“てめえ、いい加減にしろ”って。そしたら、ますます牧瀬さんが閉じちゃった。これ体罰でしょ!。しかも痔入れた手で殴るって(一同笑)」

 

 中井さんと牧瀬里穂さんが、ベランダで影踏みに興じる、ほのぼのした長回しのシーンだが、裏側は相当シビアだったようである。

 その後、中井さんが出演するCM(日産セフィーロ)を相米が演出することになった。

 

中井「 “貴一、金ないんだよ”って言うから、電通の人に頼んだんです。コマーシャルだから、長回しやテストをしないって言ってたのに、朝からテイク47(一同笑)」

榎戸「(短いコマーシャルで)テイク47ってすごいですね」

中井「終わったときには、コマーシャルってこんなにつらいもんかと。ワンシーンワンカットみたいで(映画と)同じですよ。こっちは小遣い稼ぎにと、相米慎二の生活のことを考えてたのに、ことごとく裏切ってくれましたよ(一同笑)」 

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【その人物像】

 女性には特に厳しかったようだが、一方でもてたらしい。

 

中井人形町で飲んでて、いい絵が飾ってあって、ああかわいい絵だなって思ったんです。相米さんも“いいな”って。そしたら帰りに、おかみがその絵を包んでた。何だ、おれも欲しいって言えばよかったと(一同笑)。女性の心をつかむのがすごいんですよ」 

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 中井さんは、『お引越し』(1993)では桜田淳子さんと夫婦役を演じた。

 

中井「この前、引き出しを掃除してたら箸袋が出てきたんです。あのときは桜田淳子さんが大騒動になってて(宣伝の)キャンペーンがその話ばかりで(マスコミは)桜田さんにずっと質問して、あとは監督にひとつ質問して終わりでした。それで箸袋に“ハゲのバカオヤジとバカ女ばかり目立ってごめんな マルそ(そ、を○で囲む)”って書いてきて」

榎戸相米さんの気遣いだったんですね」

中井「それは判るけど、箸袋ってのが(一同笑)。ホテルのメモ帳に書くとか、口で言えよ。しかもマルそって!(一同笑)」 

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 相米作品に出演した役者同士が会うと、相米監督の話になるというのは、よく聞く。

 

中井「最近も小泉(小泉今日子)さんと芝居してても、相米さんが見たらどうかなって。それが指針ですね」

 

 小泉今日子さんは、相米の遺作『風花』(2001)に主演している。

 最晩年の相米浅田次郎原作『壬生義士伝』の映画化を準備して、病室でも資料を読んでいたという。『壬生』は、相米の死後に、滝田洋二郎監督によって全く違う形で映画化され、相米作品の経験者である中井さんと佐藤浩市さんが出演した。

 

中井「『壬生義士伝』(2003)のときは、浩市と“この映画は、命を賭けて彼に捧げよう”って話した。そんな気持ちにさせる人でしたね。人たらしなのか、判らないけど、あんな大人になりたくないって思わせながら、(みなを)引きつける魅力的な人だったって思います」

 

 最後は相米監督への愛情あふれるコメントを残して、中井さんは会場を後にした。

 

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