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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

中井貴一 トークショー(甦る相米慎二)レポート・『東京上空いらっしゃいませ』『お引越し』(2)

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【出逢いと『東京上空』】

中井「(初めて会ったときは)エンジンフィルムの安田匡裕さんと、1時間半、ひとことも喋らなかった。こちらも人見知りですから、その次にゴルフへ行って、ゴルフ場で初めてちゃんと話した。感じ悪いおやじだなって(一同笑)」

榎戸「『魚影の群れ』(1983)のときも、文明堂でプロデューサーとぼくと監督がいて、佐藤浩市さんが来たんだけど、みんなで15分は黙ってた。監督が何も言わないと、こっちも口を挟めない。で、浩市さんがガバッと立ち上がって帰った。すると監督が“いいな、あいつ”って」

中井「ぼくの場合は1時間。誰も口火を切らないから、耐えられなかったですよ」

 

 そしてゴルフ場を回ったわけだが…。

 

中井「ゴルフがひどい。フォームはひどい、クラブは古い、でもスコアはいい(一同笑)。ゴルフって、こんなんでいいんだと。あれで入っちゃうってのは、頭はいいんですね(一同笑)。

 鶴瓶さんとぼくと安田さんと四人で飲み会を何度かやってたんですが、鶴瓶さんのところに泊まったときに、鶴瓶さんがジャンボ尾崎さんのクラブを監督に渡したんです。そしたら、そのクラブに自分の痔を入れた。鶴瓶さんは“ぼくの新しいクラブに!”って(一同爆笑)。そんな人がいい人のわけがない」

 

 そして『東京上空いらっしゃいませ』(1990)がクランクイン。初日に大井町のロケ地でトレパンを渡されて、このシーンにトレパンは必要ないだろうと思ったが…。

 

中井「初日に朝から夕方まで、同じシーン(のリハーサル)を何度も何度もやって、1日目はカメラが回らず、2日目も回らず、3日目でようやく(OK)。こっちは、汗びっしょり。だからトレパンかと。一日で相米組が判りました」

榎戸「しかも、そのシーン(映画に)使われてないですからね(一同笑)」

 

 そして、新人に対する恒例のしごきが始まった。

 

中井「これこそ、いま騒がれてる体罰ですよ。柔道女子は弱い、牧瀬里穂は強い!(一同爆笑) ゴミ、クズ、カスですよ。影踏みのシーンで、牧瀬さんの感情が閉じちゃったんで、牧瀬さんをばしっと殴ったんです、“てめえ、いい加減にしろ”って。そしたら、ますます牧瀬さんが閉じちゃった。これ、体罰でしょ!。しかも痔入れた手で殴るって(一同爆笑)」

 

 中井さんと牧瀬里穂さんが、ベランダで影踏みに興じる、ほのぼのした長回しのシーンだが、裏側は相当シビアだったようである。

 その後、中井さんが出演するCM(日産セフィーロ)を相米が演出することになった。

 

中井「 “貴一、金ないんだよ”って言うから、電通の人に頼んだんです。コマーシャルだから、長回しや(しつこい)テストをしないって言ってたのに、朝からテイク47(一同笑)」

榎戸「(短いコマーシャルで)テイク47ってすごいですね」

中井「終わったときには、コマーシャルってこんなにつらいもんかと。ワンシーンワンカットみたいで、(映画と)同じですよ。こっちは、小遣い稼ぎにと、相米慎二の生活のことを考えてたのに、ことごとく裏切ってくれましたよ(一同笑)」 

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【その人物像】

 女性には特に厳しかったようだが、一方でもてたらしい。

 

中井人形町で飲んでて、いい絵が飾ってあって、ああかわいい絵だなって思ったんです。相米さんも“いいな”って。そしたら帰りに、おかみがその絵を包んでた。何だ、おれも欲しいって言えばよかったと(一同笑)。女性の心をつかむのがすごいんですよ」

 

 中井さんは、『お引越し』(1993)では桜田淳子さんと夫婦役を演じた。

 

中井「この前、引き出しを掃除してたら、箸袋が出てきたんです。あのときは桜田淳子さんが大騒動になってて、(宣伝の)キャンペーンがその話ばかりで、(マスコミは)桜田さんにずっと質問して、あとは監督にひとつ質問して終わりでした。それで箸袋に“ハゲのバカオヤジとバカ女ばかり目立ってごめんな マルそ(そ、を○で囲む)”って書いてきて」

榎戸相米さんの気遣いだったんですね」

中井「それは判るけど、箸袋ってのが(一同笑)。ホテルのメモ帳に書くとか、口で言えよ。しかも、マルそって!(一同爆笑)」

 

 相米作品に出演した役者同士が会うと、相米監督の話になるというのは、よく聞く。

 

中井「最近も小泉(今日子)さんと芝居してても、相米さんが見たらどうかなって。それが指針ですね」

 

 小泉今日子さんは、相米の遺作『風花』(2001)に主演している。

 最晩年の相米浅田次郎原作『壬生義士伝』の映画化を準備して、病室でも資料を読んでいたという。『壬生』は、相米の死後に、滝田洋二郎監督によって全く違う形で映画化され、相米作品の経験者である中井さんと佐藤浩市さんが出演した。

 

中井「『壬生義士伝』(2003)のときは、浩市と“この映画は、命を賭けて彼に捧げよう”って話した。そんな気持ちにさせる人でしたね。人たらしなのか、判らないけど、あんな大人になりたくないって思わせながら、(みなを)引きつける魅力的な人だったって思います」

 

 最後は相米監督への愛情あふれるコメントを残して、中井さんは会場を後にした。

 

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