私の中の見えない炎

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中井貴一 トークショー(甦る相米慎二)レポート・『東京上空いらっしゃいませ』『お引越し』(1)

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 東京上空いらっしゃいませ。なんて魅力的な響きだろう(あ、そんなことない?)。まだ小学生だった若き日(?)の筆者は、新聞のテレビ欄で映画『東京上空いらっしゃいませ』(1990)のタイトルを見つけて、その語感をいたく気に入った記憶がある(実際に見て、すぐ寝てしまったのだが。思えば、これが初めて接した相米慎二作品だったわけか)。

 故・相米慎二監督の『東京上空いらっしゃいませ』は、相米作品の中では、『セーラー服と機関銃』(1981)のように大ヒットしたわけではなく、『お引越し』(1993)や『あ、春』(1998)のように批評家筋の評価が高いわけでもなく、『台風クラブ』(1985)のように先鋭的なわけでもなく、いささか地味なポジショニングにいるかもしれない。けれども、この度の特集上映“甦る相米慎二にて、この作品を見直して、味わいのある佳篇だったと印象を新たにしたのであった。

 http://www.magichour.co.jp/somai2013/

 主人公の新人タレント(牧瀬里穂)は、スポンサーのエロ専務(笑福亭鶴瓶)のセクハラから逃れようとしたところ、車にはねられ、命を落とす。だが死後の世界で、お人好しの死神(鶴瓶・二役)をだまし、地上へ舞い戻ることに成功。広告代理店で自分の担当だった男(中井貴一)の家に転がり込む。そして、芸能界デビュー以来久々に同級生に再会したり、初めてのバイトをしたり、主人公は死んでいるのに、生きることを実感していくのだった。

 

 怪作『光る女』(1987)の興行的失敗以後、3年の沈黙を経て相米監督が発表したのは、80年代のどこか破滅的でやりたい放題な傑作群とは異なる、ほろ苦くも爽快な青春ファンタジー映画であった。広告代理店のパーティや、中井貴一演じる人物の自宅アパートなど、いかにもなバブル期の風俗が盛り込まれているゆえ、相米の色は薄く感じられるかもしれない。また、監督自身も時代の趨勢の変化を感じて、自らの個性を抑えるように努めていたのではないかと想像する。もっとも、バイトのシーンなどで、相米らしい長回しのシーンはある。

 役柄と同じような新人タレントであった牧瀬里穂を売り出すための企画だったようだが、この作品で牧瀬は新人賞を多数受賞。キャリアのない若手俳優に見事な演技をさせる相米の手腕は、健在であった。牧瀬に隠れているが、中井貴一の抑えた好演も印象的。中井貴一は、『お引越し』にも出演しているが、私見ではどうもこの時期の中井は『その木戸を通って』(1992)、『四十七人の刺客』(1994)、『マークスの山』(1995)など大袈裟にやりすぎな気がして、少し前の『東京上空』の控えめな演技のほうが、好感が持てる。

 牧瀬と鶴瓶が空を飛ぶシーンなど、いま見ると微笑ましい超アナログ特撮も一興である。

 

 1月31日、『東京上空いらっしゃいませ』の上映後に、中井貴一さんのトークショーが行われた。この日、スペシャルゲストが来場するかもとは告知されていたけれど、それが誰かは当日まで明かされていなかった。

 中井貴一さんは、相米作品では『東京上空』と『お引越し』に出演。筆者は、中井さんと言えばテレビ『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(1983~1997)や『風のガーデン』(2008)、『最後から二番目の恋』(2012)などで強い印象があるけれども、芝居を見てもインタビューを読んでもすごく真面目な感じで、トークを聴きたいという気はあまりしなかったのだが(失礼!)、予想に反して全編ジョーク連発であった。

 トークの相手役は、相米監督の「最も身近な助監督」(寺田農談)だった榎戸耕史監督である(メモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや、整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

榎戸「中井さんは、相米さんとお酒を飲んだりゴルフをしたり、彼の素をご存じですね」

中井「食事したり、ある意味たかられた。死ぬと人って美化されるけど、さほどの人間ではなかった(一同笑)。

 電話かけてきて“飯食わせろよ”って、上から目線で来る(一同笑)。浅草の○○でって、店の指定までしてきて」(つづく) 

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