私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

『魔性』(1984年、主演:浅丘ルリ子 脚本:池端俊策、矢島正雄 演出:鶴橋康夫)

 原作:一色次郎

 脚本:池端俊策矢島正雄

 演出:鶴橋康夫

 音楽:坂田晃一

 主演:浅丘ルリ子

 

 『魔性』は1984年2月に、“木曜ゴールデンドラマ”という2時間ドラマの枠で流れた。

 拘置所の独房にいる主人公(浅丘ルリ子)の姿から、『魔性』は始まる。主人公を無言で見つめる、人形の不気味な眼。彼女は人形師なのだった。

 主人公は、レズビアンの恋人(芦川よしみ)を殺害後、亡骸を切り刻み、一部を口にした。お魚みたいな味だったという。現在は、拘置所で死刑執行を待つ身(死刑囚は、刑務所ではなく拘置所に置かれる)。愛人の画家(津川雅彦)が「あれは事故だったんだ」と再審請求を勧めても、「死ぬ覚悟」と取り合わず、拘置所では北海道で牛のえさにするようなものが食事に出される、ステーキを食べたいとぼやいてみせる。牧師(三國連太郎)には、毎日模範的な日々を送っていますと嘘をつく。

 

 主人公は人形教室の先生をしていて、恋人は生徒だった。周囲の目を盗んで、ふたりは手を握り合っていた。なわとびをする恋人の姿に、その裸を幻視する主人公。そんな主人公に、求愛する画家。

 あるとき、主人公は、恋人とふたりで互いの首を絞めた。その直後、恋人はがくりと死んでしまう。

 人形がバラバラにされる。当然、恋人がバラバラにされているという意味である(切られた人形の手足の付け根が真っ赤になっていて、芸が細かい)。遺体の部位を、橋から川へ捨てる主人公。最後に生首を捨てるときに、そっとキスをした。

 

 また拘置所へ再審請求を勧めに来た画家に、主人公は、あなたは私の恋人に手を出した、嫌らしい女にしたと詰る。画家は、恋人のほうからぼくに手をつないできた、きみは彼女を人形のように思っていたんだと反駁。主人公は衝撃を受ける。

 画家と恋人が主人公の目を盗んで手を握り合ったのは、三人で橋の上にたたずんでいたときだった。後にバラバラになった恋人を捨てた、あの橋。

 

 肉親が全く面会に来ないのはあなたぐらいだと、看守(白木万里)が主人公を非難する。やがて牧師が、主人公は自分の過去を偽っていると暴く。ねっとりした口調で語りかける、牧師役の三國連太郎

 主人公は北海道の幸せな家庭で育ったと言っていたが、実は義父にレイプされていたのだった。母親は、バラバラ殺人の発覚後に自殺している。

 

 主人公は、独房へ飛んでくるかもめに、つかの間の友情を感じていた。かもめがしばらく来ないと動揺し、やがて再会できると子どものように喜ぶ。看守とふたりで地図を眺めていたとき、ふたりで鳥になったつもりで地図の上を跳ね回ったりした。

 拘置所内にいる、死んだ恋人によく似た、なわとびをする女。やがて、彼女はもうすぐ出て行くと知る。「(彼女は)若いんだもの、(しゃばで)ショッピングをしたり」などと看守に聞かされた主人公は、女に惹かれた。グリーンのアイシャドウ(?)をして、女を追い回す。かつて、なわとびをする恋人の裸身を想像したことを思い出していたのだった。

 

 画家は牧師に、再審請求をするように頼むが、牧師は彼を突き放す。ふたりの周囲を、何も知らない幼稚園児たちが輪になって遊んでいる。

 

 そして迎えた死刑執行の日。直前になって主人公は激しく取り乱す。何人もの看守に捕らえられると、「逃げないから放して」と言ったそばから、猛スピードで走って逃げる。

 それでもつかまり、絞首台へ。暴れる主人公。

「再審請求して!」

「(居並ぶ関係者に)帰りにどこかでお酒を飲むんでしょ。よくお酒が飲めますね。よくごはんがのどを通りますね!」

 やがて、首つりになってすとんと動かなくなる主人公。左右にゆらゆら揺れて、足を血がだらりと流れ落ちる。この映像がテレビで放送されたのか…。

 

 主人公の遺骨を、画家が故郷の北海道へ持って来た。

 そこへ馬に乗った男(三國連太郎・二役)が現れる。彼こそが、義父であった。いっしょに馬に乗った女の子。その子は、義父と主人公の娘なのだという! その虚ろな瞳が怖い。いったいどんな目にあわされてきたのだろう。

 茫然となる画家の姿。

 

 バラバラ殺人はどのように発覚したのかなど、いくつかの謎は明らかにされない。主人公をレイプした義父と牧師とを同じ三國が演じている。どうして牧師はこんなに怪しいのかと思っていたら…。荒涼たる後味を残して、『魔性』は終わりを告げる。 

テレビ・トラベラー: 昭和・平成テレビドラマ批評大全

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