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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

AKB48 PV考・「真夏のSounds good!」(2)

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 AKB48の最新シングル「真夏のSounds good!」PV眼目は、後半でメンバーがビーチにて水着姿で踊るシーン。

 ネットの記事には、「「ポニーテールとシュシュ」「Everyday、カチューシャ」に続く恒例のサマーソングで、「ポニーテール−」のPVを撮影した同じビーチで白のビキニ姿の36人が歌い踊る」とある。PVがワイドショーなどで取りあげられたのを見ると、メンバーが踊るシーンで誰が次のセンターだとか、誰それがいちばん長く映ってるのは今後の布石だとかいったことが主な話題なのだった。 

 しかし、ネット上などで物議を醸しているのは、前半部分である。記事には「テーマは“地獄”と“天国“。前田(敦子 20)や大島優子(23)ら、ボロボロの衣装をまとい傷だらけの“守り”と呼ばれる選抜常連組の18人に、渡辺麻友(18)やSKE48松井珠理奈(15)ら“攻め”の若手メンバー18人が救いの手を差し伸べ、 その先の未来を想像させる」とまるで青春ドラマか何かのように触れられているが、見てみると、 

 

 ①前田や大島らの古参メンバーが、瀕死の状態で荒野に横たわっている。 

 ②それを偶然見つけた、渡辺や松井らが助けに駆け寄る。 

 ③空から隕石群が襲ってくる。 

 ④助けに来たメンバーも、次々と吐血して倒れる。血は青い。死体が折り重なっていく。 

 ⑤渡辺と死にそうな前田は、ふたり脱出して逃げる。 

 ⑥唐突に画面が切り替わり、ビーチでダンス。 

 

という流れ。曲は軽快なタッチで、歌詞はなかなか関係の進展しないカップルを歌っているのだが、③~⑤などSFホラーのような映像で、乖離が甚だしい。

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 「真夏のSounds good!」と同様のサマーソングである過去の「ポニーテールとシュシュ」「Everyday、カチューシャ」にも、水着で踊るシークエンスが長々とあるので、今回見直してみた(もちろん研究目的である)。筆者は撮影の技術にはあまり詳しくないのだが、ダンスシーンの印象はあまり変わらない。今回は水着の色が白に統一されて、「ポニーテール」のような空撮はないという程度である。水着のダンスは5月ごろ発売の曲にノルマとして毎度課されるもので、その部分はセオリー通りに撮られたということだろう。 

 やはり、今回の作り手が心血を注いでいるのは、前半である。樋口真嗣監督に依頼した側は、後半はダンスで、前半はVFX満載でメンバーが敵と戦うような映像を想定していたのではないかと思うのだけれど…。

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 ネット上などでは、「意味わからない」「怖い」と当然みな面食らっているようだが、この一見衝撃的なPVは、AKBを殺したいとかそういう意図・意味ではなく、ただひとえに樋口監督が彼好みの“終末”を詰め込んだだけのように、筆者には思える。 

 樋口真嗣は15年くらい前に「多感な時期にオイルショックと終末ブームを迎えて育ったおかげでディザスター・マニアになってしまったのだ。だから悪いのは小松左京五島勉だろう」と発言したことがあった(『GAMERA2―ULTIMATE CHRONICLES』〈徳間書店〉)。 

 小松左京日本沈没』(小学館文庫)と五島勉ノストラダムスの大予言』(光文社)は、70年代に相次いで映画化され大ヒット。オイルショックや公害に揺れる日本に、終末のイメージを植え付けたようである。 

 感銘(?)を受けた樋口は、自身の監督で『日本沈没』をリメイクしたり(2006)、特技監督を務めた『ガメラ2 レギオン襲来』(1996)では仙台全域が大爆発で跡形もなく消滅するという映像を手がけている(仙台壊滅の展開は、樋口のアイディア)。 

 そう、アイドルになどおそらくほとんど関心のない樋口は、ダンスを入れれば他はあんたの自由にしていいというオファーに対して、PVの場を借りてお得意の“滅びの宇宙”を開陳してみせたのであった。東日本大震災原発事故を経た昨今では、一般の映画で終末の映像をつくる機会はそうそうないであろうことは、想像に難くない。監督自身が前半部分を「誰得」と言明している以上、AKBのファンにこんなものを求められていないと承知したうえでの、確信犯的所業だろう。(https://twitter.com/higuchishinji/statuses/192742311627726849

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 前田敦子のAKB卒業により、次のトップは誰なのかが世間の関心事であろうが、筆者が気になるのは、次はどんな個性的なPVが繰り出されるのかということに尽きる。 

 個人的な好みとしては、次あたりは『相棒』シリーズ(2000~)のメインディレクターである和泉聖治監督で、刑事ドラマ風のPVなんてどうだろう? 和泉監督ご本人は、『相棒』の渋めの雰囲気とは裏腹に、若い子が大好きという未確認情報があるだけにまさに適任では…。

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