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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

トークイベント “もっと、岡本喜八を!”(寺田農 × 伊佐山ひろ子 × 岡本みね子 × 岡本真実 × 佐藤闘介 × 佐々木淳)レポート・『肉弾』『ブルークリスマス』(3)

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三船敏郎の想い出】

 三船敏郎は、前出の『赤毛』(1969)や『座頭市と用心棒』(1970)のほか、『暗黒街の顔役』(1959)、『暗黒街の対決』(1960)といった岡本作品に主演している。

 

伊佐山「『吶喊』(1975)は、(三船敏郎率いる)三船プロのスタジオを、毎晩、夜だけ借りて撮ったんですね。だから眠くなるのも当たり前で」

みね子「夜だけ貸してって三船さんに言ったら、えって驚いてたけど、三船さんは監督に頼まれたら絶対に断れないから(笑)。昼間は『大江戸捜査網』(1970〜1992)、夜は『吶喊』を撮ってた」

伊佐山「そろそろ朝で撤収ってときになると、いつのまにか三船さんが来てて、スタジオとか玄関とか掃除してるんです(笑)」

みね子「あの会社は、社長がいつも早朝出勤で、会社中をひとりで掃除してるんです(一同笑)。ほんとにまめで、気さくな人でしたよね」 

 

寺田「『赤毛』ではスリの役だったせいか、ずっとわらじを履いてました。わらじって、だんだん足が痛くなってくるんです。だから(画面に足が)映ってないときはおれは履かねえってぬいでたら、助監督が困っちゃって、見かねた三船さんが“寺さん、それじゃだめだよ”ってぼくにわらじを甲斐甲斐しく履かせてくれたんです。普通だったら、すみません、自分で履きますってなるんでしょうけど、またぼくはなまいきなガキだったから、ああどうもとか言って、三船さんが履かせてくれるまで偉そうに待ってました。“世界のミフネ”にわらじを履かせたんですよ(一同笑)」

みね子「農ちゃんのそういう大らかなところ、監督はとっても気に入ってたんですよ」

 

【佐藤闘介氏】

 映画監督の佐藤闘介氏は、『独立愚連隊』(1959)の主演者・佐藤允氏の子息だそうで、名前は知っていたものの、ふたりが親子だとは全く無知であった。

 

佐藤「父は代表作がすべて岡本作品という幸運な俳優で、ぼくは、きょうは父の代理でここに来ているようなつもりです」

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 佐藤家は岡本監督の自宅の三軒となりにあったそうで、佐藤氏にとって岡本監督は「隣のおじさん」のような感覚であったという。

 そんな佐藤氏が、もっとも愛着があるのは異色のSFブルークリスマス』(1978)。世界中でUFOが目撃され、UFOの青い光を浴びた人間は血が青くなって、なぜか心優しくなる。しかし、天本英世らによって謎の陰謀が張りめぐらされ、ついにはクリスマスの夜に世界中で青い血の人間が大量殺戮されてしまうのだった。公開当時は散々の不評だったそうで、ネット上でも酷評が目立つけれども、個人的には結構面白い作品だと思う。この作品のサブタイトル“BLOOD TYPEBLUE”は、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)でも、印象的に引用されている。

 

佐藤「いわば『ブレードランナー』を思わせるような映像世界で、ああいう大人のSFって日本映画では類を見ないと思うんです。佐藤勝さんの音楽もかっこいいし、ヒロイン役の竹下景子さんと、当時結婚したいなーとか思いました(笑)。毎年いつもこの時期(11月下旬~12月初旬)になると、『ブルークリスマス』を見直すんです。ひとりのクリスマスを盛り上げようと(一同笑)」

【佐々木淳氏】

 定本的な研究書『kihachi フォービートのアルチザン』(東宝)を編集した佐々木淳氏は、映画関係の編集者で、『大誘拐』(1991)のパンフレットを編集したのが出会いであった。

 

佐々木「パンフを編集するのに、不思議な注文が多くて(笑)。音楽の佐藤勝さんと監督が朝から酒を飲みながら喋り倒すとか、(常連の)天本英世さんと監督が語り尽くすとか、もうパンフレットじゃないよってぐらいに。強烈でした」

 

 他のパネリストの方たちが、岡本監督の人間的なエピソードや周辺の話をするのに対して、佐々木氏は総論的にうまくまとめていた。

 

佐々木「岡本作品は、役者がみんないきいきしている。三船さんも仲代(仲代達矢)さんも、はじけている。今の映画やテレビって、役者がみんなリアルな芝居をしているんだけど、見ていてちっとも面白くない。岡本作品での芝居のエッセンスを受け継いでほしいですね。

 今はいろいろ規制が多くて、できないことがいっぱいあるんだけど、岡本作品は(『殺人狂時代』〈1967〉みたいに)タブーとかやばいことをさらりと描いてみせるかっこよさがある。今の作品にあまり見られない、危険な味をぜひ感じてほしい」

kihachiフォービートのアルチザン―岡本喜八全作品集

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 “鬼才”を若い世代にも知ってもらう取り組み」とあるが、実際に来ているのは40代以上の濃い客層に見えた。ただ岡本みね子氏も言及していたように、女性客が目立ったのは、たしかに意外であった。

 終了後に、ロフトから出て行く寺田氏といっしょになったので、「がんばってください」と言ったら、「あ、はい。どうも」と、“なんだこいつ”という顔をされました(笑)。