ライオン「おれはひじょうに腹ぺこだ。(…)お前(のび太)、うまそうだなあ」
ふるえあがるのび太。でもキャップをかぶっているので逃げられません。何でも言うことを聞かなくてはいけないのですから。ライオンは彼に台所からバターを持って来させ、服を脱がせます。
ライオン「バターをぬれ。からだ中にたっぷりと」(これは別役実作品?)
そしてのび太をお皿の上に正座させて、
ライオン「いただきまあす」
のび太は泣き叫びます(当然だ)。
のび太「ドラえも~ん」
颯爽とドラえもん登場かと思いきや…ライオンがつぶやくのでした。
ライオン「待てよ。(…)なにかものたりないと思ったら、おれ、ケチャップをかけないと食えないんだ」(はあ?)
そこで切らしていたケチャップを買いに行けと、ライオンはのび太に命じます。
のび太「逃げられるわけないだろ。こんなもの、かぶってるんだもの」(キャップの威力。自分が食べられるための味つけキャップを買いに行くって…)
店で不思議そうなおじさん。
おじさん「ケチャップをそんなにたくさんどうするの?」
のび太「体にぬるの」
一応ラストは後味よく終わるのですが、スリリングな展開とブラックな笑いに満ちた怪エピソード。
未収録のドラえもんには他にも葬式ごっこ、人体バラバラ、人食い人種などもっと不謹慎なモチーフによる作品がありますから、それらもぜひ “ドラえもんマイナス” とでも題して復刻してほしいものですね。
(2009年より刊行の始まった『藤子・F・不二雄大全集』〈小学館〉に『ドラえもん』の未収録作品は収められた。「イイナリキャップ」は『ドラえもん』の2巻に収載されている。)